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2018.11.09 [インタビュー]
「私が審査で意識したのは、“映画的な言語”が使われたかどうかです」--審査委員長 ブリランテ・メンドーサ インタビュー

メンドーサインタビュー

©2018 TIFF

 
東京国際映画祭公式インタビュー 2018年11月2日
審査委員長 ブリランテ・メンドーサ インタビュー
 


 
愛する家族を失った若者と少女の“癒しの日々”見つめた『アマンダ』が、東京グランプリ&最優秀脚本賞、人身売買組織からの脱出を描くサバイバルドラマ『堕ちた希望』が、最優秀監督賞&最優秀女優賞。そして、19世紀デンマークを舞台に貧困に喘ぐ農民たちにスポットを当てた『氷の季節』が、審査委員特別賞&最優秀男優賞と、ダブル受賞が際立った第31回東京国際映画祭。その選考課程などを審査委員長のブリランテ・メンドーサ監督に伺った。
 
——審査を終了しての感想は?
ブリランテ・メンドーサ審査委員長(以下、審査委員長):大変な経験でした。私自身が、映画製作者であり監督でもあって、普段は審査をされる立場ですから。しかし、今回はそういった立場はさておき、審査委員としての目を持って作品を鑑賞することに専念しました。その作品の持っている良さ、メリット、コンペティションにふさわしいクオリティなどを中心に観ていくと同時に、これらの作品は受賞に値するのか、受賞すべきではないのかというところも考えました。
そういったいろいろな要素がありましたが、とりわけ私が意識したのは“映画的な言語が使われているか”ということでした。作品によっては、文字で書かれた脚本の段階ではとても素晴らしく秀でていると思っても、実際に映画にすると違った物になってしまうことがあります。映画というのは視覚媒体ですから。私は常にそのような観点から映画を評価することにしました。
 
——他の審査委員と意見が対立したことは?
審査委員長:私は、審査委員長というものを5回ほど経験していますが、毎回ほかの審査委員の方々の意見に耳を傾けることから始めます。そして、もし重要な決断をしなくてはいけない時でも、もし意見が別れてしまう状況になっても、あくまでみなさんが納得する答えを探す努力をします。これまでの経験でも、今回の選考でも、意見が対峙するといったことはありませんでした。とくに今回は、どの賞も全員一致で決まりました。
 
——グランプリも全員一致ですか?
審査委員長:そうです。審査委員のみなさんがそれぞれに多面的な視野と価値観で『アマンダ』を選びました。
 
——監督としてプロデューサーとして、個人的に刺激された作品はありましたか?
審査委員長:『アマンダ』です。命についてあらためて考えさせられました。平和な公園でなにもしていない人々が突然、殺されてしまう。私たちの命がいつどうなるかわからないということ。最も安全とされる場所でも、そういった暴力が起こりえるということを考えさせられました。
また、シングルマザーに育てられていた小さな女の子が母親を失い、より辛い状況に置かれてしまう。彼女の母親の弟、叔父にあたる青年も自分が生きるだけでも精一杯なのに、急に幼い姪への重い責任が課せられる。そういった物語にとても心を揺さぶられました。
 
——審査委員が選んだ受賞作は、すべてヨーロッパの作品でした。アジアの作品は、なぜ選ばれなかったのでしょうか?
審査委員長:今回、私たち審査委員は、作品の製作国を意識するという観方はしていません。純粋に受賞にふさわしい、価値がある作品に栄誉を与えたいという思いのみで決定しました。全体的な印象としては、ヨーロッパの作品の方が内容に重みがありシリアスで、タイムリーな題材を扱っている作品が多かったと思います。
 
——日本映画の『愛がなんだ』『半世界』についての感想は?
審査委員長:私たちは、映画祭側のプロデューサーから事前に“コンペティションで選ばれる作品は、芸術的な要素と商業的に観客を楽しませるという要素。その両方が必要だ”と言われました。ですが、個人的な意見を言わせてもらえば、芸術と商業性は組み合わせることができないと思っています。
私のミッションとして大事なのは、自分が思い描くテーマをはっきりさせて、自分のビジョンに忠実に映画を作ること。その結果、後になって商業的な成功があったら幸運だと思っています。観客にフレンドリーな作品を作ることを意識しながら、芸術と商業的な娯楽性を融合することは大変むずかしい。たとえば、『愛がなんだ』に関しては観客が共感しやすいように作られた作品ではありますが、コンペティションで競うようなものではないような気がします。物語のテーマ性や伝え方にもう少し深みが欲しい。
もちろん、これが駄作と言っているのではありません。こういう作品は商業映画であり、映画祭が意図する芸術性はあまり感じられなかったということです。『半世界』に関しても同じです。いい演技をしている俳優もいましたし、日本の地方の暮しを垣間みることができたのは良かったですが。
メンドーサインタビュー
 
——もっとアジア色を強く打ち出すべきとか、日本の著名監督の出品がないのが物足りないなどの声が聞かれます。そういった意見をふまえた上で、東京国際映画祭の改善点、質の向上についてのアドバイスをいただけますか。
審査委員長:アジアの作品が不足しているとは思いませんでした。ただし、参加作品のクオリティや傾向についても、あくまでも時期的なタイミングを考慮しなければならないと思います。例えば、東京国際映画祭は10月の開催です。しかしその前には、2月にベルリン映画祭とサンダンス映画祭、5月にはカンヌ映画祭があり、9月にはトロント国際映画祭とヴェネチア映画祭があります。さらに東京国際映画祭の前に釜山国際映画祭もあります。
そして、韓国のその映画祭の方がアジアでは確立されていますから、アジアの映画製作者としても迷うところです。もちろん配給元との兼ね合いもありますしね。日本の著名監督に限らずどの製作者も、より主要な映画祭に出品したいと思うのは当然です。その方が影響力は大きいですから。
 
——今後どのようにしたらいいでしょうか?
審査委員長:最近ではヨーロッパの映画祭に、アジアの作品がコンペティションに出品しにくい状況があります。それは日本を含めたアジアの映画製作者たちも考慮し、改善していかなければいけない課題です。そんな状況の中で東京国際映画祭がより地位を確立していくのは大変むずかしいことですが、ゆっくりと質の良い作品を集めて徐々に確立していけばいいと思います。そういったたゆまぬ努力があれば、世界に認知され地位も確立できるのではないでしょうか。
 
(取材/構成 金子裕子 日本映画ペンクラブ)
 
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