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2018.11.12 [イベントレポート]
「普通の人たちが気が付かない、マイノリティーの方たちの生活を描いた」10/31(水):Q&A『トレイシー』

トレイシーの監督

©2018 TIFF
10/28(日)のQ&Aに登壇時のジュン・リー監督

 
10/31(水)、アジアの未来『トレイシー』上映後、ジュン・リー監督をお迎えし、Q&A が行われました。
作品詳細
 
ジュン・リー監督:みなさん今日はわざわざここに来て映画を観に来てくださりありがとうございました。映画を観てからみなさんが何か変わるというか、自分の中で何かが変わったらいいなと思っております。
 
Q:カラ・ワイさん演じた奥さんが趣味で広東のオペラをやっていらっしゃいますが、その設定についてなにか理由があればお聞かせいただければと思います。
 
ジュン・リー監督:まず設定で、彼女は趣味で広東オペラを歌っているんです。広東オペラの中では女性が男性役になって歌っている訳です。とても前衛的なんですけど実際は趣味でやっているだけで、非常に伝統的というか、言葉を変えると保守的なんですね。中年の女性の方が趣味で歌っていることが多いんですよ。実際に、自分は女であって男の役をしているけれども、夫がトランスジェンダーになるというときにそれにどう向き合うか、どう受け止めるか、ということになってくるとそれが難しいわけなんですね。彼女は広東オペラの中で最初は男役の歌を歌っているんですけれども、もしかしたら気が付かれたかもしれないですけど、少し変化が出てくるんです。夫が自分が女になりたい、女性になりたいって言いだす前は若い男性役の歌を歌っていたけど、トランスジェンダーで女性になりたいって言った後は、女性の歌を歌っているんですよ。広東オペラの中でそれを歌っていながら、この映画の結末と少しリンクしているというか合わさってきているという設定にしています。
 
Q:カミングアウトをするシーンがありますが、どうしてそういう形のカミングアウトにしたのか教えてください。
 
ジュン・リー監督:まずダイホンも自分で言いたかったと思うんですけど、でもどうやって切り出すのか、どういう風に言うのか分からないという状況で、ちょっと手助けするというか、カミングアウトするのを横からちょっと手助けしてあげるような感じかなと思います。でも、ちょっと変だなと思ったというのがあったっていうのは当たっていて、少し無理やりというか言わせたということもあるのはあるんですね。というのも若い人たちって割と人がこう言われたらどう感じるか、あんまり考えないという、ちょっとした欠点みたいなところがありますよね。衝動的になって、人の気持ちをあんまり考えないところがあるんです。だから見ていてちょっとなんか変だなと思われたのはそういう所だと思います。20代30代の方とその親の世代の間の子、世代の溝みたいなものがあって、それが若い子たちから見ると、自分たちは結構進んでいて前衛的なので、親を見ると親はあまりにも保守的だと目に映ってしまうんですよね。そのふたの世代の間でいろいろ摩擦が起きて、それが和解まではいかないにしても、お互いに理解はできるようになるというか、そういうのはずっとお話の中に続いているのだと思います。そういう意味です。
 
Q:会話が中国語と広東語でやり取りしているシーンがある理由、登場人物が台湾に留学しますが、台湾のほうが香港よりもLGBTが進んでるというメッセージが入っているのでしょうか。
 
ジュン・リー監督:まず、ひとつめから答えさせていただきますね。リズムの問題というか、北京語と広東語には実際に聞けるけど、話せないという状況があるんですね。お互いに北京語を話す人は、広東語は聞けるんだけど自分は話せない。広東語を話す人は、聞くことはできるけど話せないという状況があるので、今回も主人公は広東語を話して、相手は北京語を話していても会話が成り立つということは実際にあり得るんです。だけどもし彼が英語を話したら、片方が英語を話して片方が広東語を話すって、それで会話が成り立つって非常に難しいと思うんです。だから北京語と広東語だったら、実際にこういうシチュエーションがあるよっていうのでこのようにしました。ふたつめのなぜ台湾に留学したという設定にしたかというと、彼がいろんなことを知っているからなんです。実はシンガポール生まれで台湾育ち、イギリスにも留学したことがあるという方で役者をやっています。台湾はアジアの中でも進んだ国ですし、彼は台湾にも長くいたことがあるので、いろいろ地域のこともよく知っているんです。とくに映画の中で彼の生い立ちについては話していませんが、台湾が最先端に進んでるというわけではなくて、いろんな地域のことを知っているので、世界的なグローバルな人という感じで出しています。
 
Q:私は子供の頃から香港映画が大好きでずっと見てきました。ただ香港映画にはこういった同性愛とかトランジェンダーのものをテーマにしている作品は少ないと思います。何故このテーマで撮ろうとしたのか教えてください。
 
ジュン・リー監督:ひとつは、そろそろかなと思ったからです。トランスジェンダーをテーマにする、そういう時期かなと思って。私自身、大学の専攻で国際関係と性別研究哲学を勉強していたので、元々興味があったというのと、プロデューサーが「こういうテーマがあるんだけど、どうだい」と言われた時に、いいなと思って、すぐに撮ることを決めました。プロデュース会社も香港映画に関しても、新しい監督や新しいテーマの作品など、新しいものを望んでいました。今この作品ができたので、今後の作品はきっともっと違うものも出てくると思います。やはり性的マイノリティーの方や、トランスジェンダーの方って本当に色んなタイプの方がいらっしゃいます。この映画にはすべて盛り込むことはできていません。女性が男性に、男性が女性の方になったりしますので、本当に色んなタイプがいらっしゃいますから。この映画の一番の見どころは、自分がカミングアウトして、家族に認めてもらいたくて、家族との間にも確執などが生まれて色々な問題が起きてしまうところです。例えば、手術前に色々起こることをテーマにしても撮ることができますし、手術を受けた後の話をテーマにしても撮ることができます。一本ですべてのトランスジェンダーの方を中に盛り込むことはできませんので、今回の映画はスタートという感じで、今後トランスジェンダーを取り扱う映画がたくさんでてきて、クリエイターの方や役者の方も作品を撮られるかと思います。こういうテーマを扱うのは、非常に大胆だと思われがちですが、でもこれって普通の生活のあることなんですね。普通の人たちが気が付かない、マイノリティーの方たちの生活なので、特別大胆なことではなくて、マイノリティーの方たちはこうなんだという部分に焦点を当てて、私はこの映画を撮りました。
 
Q:脚本は3人のお名前の方が出ていたと思います。ジュン・リーさん、シュウ・ケイさん、エリカ・リーさんと3人いたと思いますが、それぞれどういう役割で書いていったのか教えていただけますか。
 
ジュン・リー監督:最初は、シュウ・ケイさん、エリカ・リーさんが基本的なものを書いていまして、それで監督を探していたんです。はじめは、私ほど新人ではない監督を探していたようです。最終的に私のところに話がきて、私は彼らがつくった基本的な脚本に手を加え、手を加えたものをベースにして、相談しながら作成しました。お互い協力しあって進めていました。

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