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2018.11.12 [イベントレポート]
「憧れるような人たちが揃って出演してくれてちょっと怖かったです」10/31(水):Q&A『愛がなんだ』

愛がなんだ

©2018 TIFF

 
10/31(水)、コンペティション『愛がなんだ』上映後、今泉力哉監督をお迎えし、Q&A が行われました。
作品詳細
 
今泉力哉監督:本日はご来場ありがとうございます。たくさん映画がある中、この『愛がなんだ』を選んでいただきありがとうございます。監督しました今泉力哉です。
 
矢田部PD(司会):本当にベーシックな質問からスタートして恐縮なんですが、『愛がなんだ』は角谷光代さんの原作ということで、原作をテコになさった、そのプロセスがご自分の脚本の延長線にあって割とスムーズにいったのか、やはり女性作家の視点でしたりとか非常に困難であったのかその辺りからお伺いできますでしょうか。
 
今泉力哉監督:最初のプロットや脚本を担当した澤井香織さんという女性がベースを書いてくださって一緒に脚本を作っていきました。安産か難産かで言うと難産だったと思います(笑)。原作があることの一番の大変さは、原作がやっぱりすごく面白いときにどうしても2時間と映画を短くしていく、小説の面白い部分を落としていく、という作業が結構大きくなるので、どうしても面白いところを落とすってことは自分一人ではとてもできませんでした。そこは脚本家さんにすごく助けられた部分だと思います。またどうしても小説とか漫画でもそうなのかもしれないんですけど特に文章での言葉と、実際に人が話す言葉っていうのはちょっと違う部分があるのでその辺をどう流していくかというところもすごく難しかったけど、すごく理解のあるスタッフだったので、一緒に書いていくことができました。
小説が主人公の心の声とかもすごく面白いので、映画でナレーションを使う、使わないもギリギリまで結構判断として迷ったり、結局バランスをとって使うことにしました。
 
Q:鐘の音が聞こえるシーン、意外に不気味に聞こえましたが、お寺さんの鐘を使用されたのか、音を使われたというのはどういう意図があって、なぜあの鐘の音の雰囲気を選んだのか教えていただきたいです。
 
今泉力哉監督:あれはMAといって最後の作業で入れている音ではありますが、そういう録音の音でも、最初はもっと高い音を軽く入れていたんですけど、何となく自分が何かを見て確認したわけではないのですが、自分の中にはもっと低いイメージがあったんです。実家で実際に聞いていたりとか、で、あの音を選びました。ですが、そこにすごい意図があったわけではなく、やはり不気味さだったりが欲しかったんだと思います。特にその日本の文化を知らない人達に言うと百八つの煩悩の数だけあって、あと実際に入れるタイミングを仕上げで調整できるわけですけど、あの会話が終わって、直前に入れたりしていたんですが、やっぱり芝居とかで気づくよりも内容との掛け合いなんですけど、二回だけ手前から音を入れてみたほうがちょうどいいんじゃないかってなって、そのタイミングがどこから鐘を鳴らすのかということをギリギリまで探っていったのは覚えています。
 
Q:キャスティングについて教えてください。
 
今泉力哉監督:初めて自分の映画を見た方もいると思うので伝えておくと、色々なシーンに今までの僕の作品に出ていただいたキャストの方が出ているんです。
今泉軍団キャストという話が出ましたけど、メインの岸井ゆきのさんについては脚本が最後の方に仕上げていくタイミングで平行してキャスティングの作業もしていたんですけど、プロデューサーとかいろんな方の名前が出ていく中で岸井さんの名前が出たときに岸井さんとやれるんだったら自分はすごくやりたいという話をしました。自分からこの人はこの人はって提示した人はそんなにいなくて、プロデューサーと話していてでた名前が、最初観たときは岸井さんがちょっと若く見えているんじゃないかってなったんですけど、過去の岸井さんの作品をいっぱい観ていたのでそういう所は憧れがあったので、やれることはすごくいいなと岸井さんになっていったとあります。他の女性キャスト、江口さんとか片岡さんは『ハッシュ!』とか様々な映画に出ていまして、筒井さんも最近『淵に立つ』で観ていて、もちろんそれまでの作品も活躍していましたし、すごく日本映画を観ていた自分としては憧れるような人たちが揃ってくれてちょっと怖かったですけど(笑)。できるのかなって、すごくまさに贅沢でした。プロデューサーさんと話しながら出てきた名前もありますね。江口のりこさんの役についてはすごくアイディアがでて、原作を初めて読んだ印象は長身でキャラクターがあったイメージがあったので、完成してみると江口さんしかいなかったのかなと思います。
 
矢田部PD:この作品マモル役に説得力がないと、成り立たないくらいだと思うのですが、その点では成田 凌さんで良かったのではないかなと思います。成田さんのキャスティングについても教えてください。
 
今泉力哉監督:あまりプライベートのことを話すのはあれなんですけど、成田さんとは個人的に親交もちょっとあって何度かお酒を飲んだこともあって、何か一緒に仕事したいって話がこの作品どうこうではなくて何年も前から話していました。その間に彼は人気になっていったんですけど、今回一緒にできてよかったし、原作ではすごくかっこいいって人ではないっていうか、そこの不安はあったんですけど、彼の人柄とかダメなことをどう演じるかというのも含めて話してすごく作っていけたなって思います。
 
矢田部PD:ここまできて触れないのも不自然なので強烈な印象を残していた、仲原っち役の若葉竜也さんについて一言お願いします。
 
今泉力哉監督:彼の名前はいろんなところで聞いていたんですけど意外とメインどころで出ている作品っていうのをそんなに自分は観られていなくてそんなに大きな役ではないんですけれども『南瓜とマヨネーズ』っていう映画で彼を観たときに本当に自分が惹かれていたのがあって、これもプロデューサーと話している中でキャストの名前として若葉さんが出たときに僕は若葉さんを知っているけど若葉さんが僕の映画を観ているとは思っていなかったんです。先日舞台挨拶とか前の助演の際に話していた時に若葉さんが自分の作品を観てくれていたということがわかって、一緒にできてよかったと思います。やっぱりいい役者というか人の魅力の一つで、自分の解釈なんですけど、テクニカルな技術面が上手いというよりも、やっぱり人間味だと思うんです。岸井さんも成田さんもそうですけど技術ももちろんあったうえで、その技術が技術に見えない、どうしても出てしまう人間っぽさとか、それはやっぱり器用じゃないってことかもしれないですけれども、そこがすごく若葉さんも持ち合わせていると思っていて、全然技術に見えないっていうかそれがすごい、それはこの映画に出ているキャストの皆はそうかもしれないですね。そういう魅力がある人たちが揃っていたと思います。
 
Q:登場人物たちの行動に対して今泉監督は共感して撮っているのか、少し引いて撮っているんですか?その辺をお聞きしたいです。
 
今泉力哉監督:そうですね、どっちもです(笑)。どっちもというかもちろん引いている部分もありますが、自分でもそのくらい誰かを好きでずっと思い続けていることもあったりして、次に他に好きな人が出来るまでってその人のことをずっと思い続けたりってことがあるのかなって思います。この作品はやっぱり思われている対象である人物がそれを上手く利用しているわけではないですけど、たまに寄り添って近づいて甘えたりしてくるのであの距離を保たれると意外と自分からは切りにくいのかなと思います。
一緒にいる人が自分じゃない別の人のことを思って話すことっていうのはすごくきついけどそういう弱音を見せてくれるってことが喜びでもあったりして、そういうのは自分も片思いしていた時に、その人の恋愛相談を受けたときに複雑だけどそれを話してくれることは嬉しいみたいな感情は経験したことがあるので、あの距離でいられると意外と自ら切り出すのはちょっと難しいかもしれないですよね。
 
矢田部PD:恋愛映画の先に行っているんじゃないかなって思ったのが、好きを通り越して相手になりたい、相手と一体化したいという。それには恐怖を少し感じてしまいましたが、これは監督としてはどういう心境と解釈されていましたか?
 
今泉力哉監督:小説を読んだりその話が劇中のミソかもしれないっていったりすることがでてきたときには、やっぱり理解できないところはあったんですけども、実際に色々考えたときに、これは現実に存在する、知り合いの女性が付き合っている彼氏がいるけど彼氏にそこまで思われてはいないっていっていう距離感があって本当にその彼氏になりたいって言っているのを聞いたことがあって、あ、そういうこと言っている人いた!って思いました。その二人は別れてしまっているんですけれども、その女性は本当に彼にすごく惹かれていて、彼になりたいって、その人になりたいっていうことを言っていたのですが、聞いた時には全く意味が分からなかったんです。でも小説を読んだときには分からなかったんだけど、僕がわからないだけで、そういう人はいるんだなって思って、その方に会っていなかったら、この小説でもしかしたら省いていたかもしれなかったです。

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