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2018.11.13 [イベントレポート]
「セリフがなくともとても豊かな空間がある」11/1(木):Q&A『ブラ物語』

ブラ物語

©2018 TIFF

 
11/1(木)、コンペティション『ブラ物語』上映後、ファイト・ヘルマー監督、パス・ヴェガさん(女優)、ドニ・ラヴァンさん(俳優)、フランキー・ウォラックさん(女優)、イルメナ・チチコヴァさん(女優)、サヨラ・サファーロワさん (女優)、ボリアナ・マノイロワさん(女優)をお迎えし、Q&A が行われました。
作品詳細
 
ファイト・ヘルマー監督:みなさんこんばんは。今回東京に来られて大変嬉しく思います。ありがとうございます。このような立派な会場で上映できたことが大変嬉しく思います。東京での滞在、大変楽しませていただいています。映画祭のみなさんに今回はお招きいただいて、大変嬉しく思います。感謝の念を述べたいと思います。今回、我々の来日をサポートをしてくださったスタッフのみなさんにもお礼の言葉を述べたいと思います。
 
パス・ヴェガさん:この度はありがとうございます。実は東京に来るのが初めてなのですが、みなさんとこうやってお会いできて大変嬉しく思います。お集まりいただき、そして、今回我々の映画をご覧いただき誠にありがとうございます。このような素晴らしい映画にキャストとして出演できたこと、そして、他の素晴らしい女優陣、俳優陣と共演できたことを大変嬉しく、光栄に思います。
ブラ物語
 
ドニ・ラヴァンさん:(日本語で)コンバンハ。私もヘルマー監督と、この素敵な女優陣と一緒にこの場に来られましたことを、大変に嬉しく思います。私はほんの数日間、ジョージアでの撮影に参加しただけなんですけれども、本当に幻のようです。私はレオス・カラックス監督の作品で日本に来たこと、東京に来たことがありますので、渋谷とか新宿とかはよく知っているんですけれども、六本木というエリアは今回初めてでしたので新しい発見となりました。このように東京の散策地図をちょっとずつ拡げて完成させていってるんですけれども、なかなか大きい街なのですべてを見ることはまだ出来ておりません。(日本語で)アリガトウゴザイマシタ。
ブラ物語
 
フランキー・ウォラックさん:(日本語で)おはようございます。日本語を学校で勉強しました。でも日本語で話すのはここまでです。
ヘルマー監督、今回東京に連れてきてくれてありがとう。そして、アゼルバイジャンでは素晴らしい撮影をさせていただきましてありがとうございました。
ブラ物語
 
イルメナ・チチコヴァさん:このような、クレイジーな、そして、とても珍しい企画に参加させていただいて、何度も言っても言い切れないくらい幸せを感じております。私の撮影は2日間ほどの撮影だったのですが、まるで1カ月間くらいいるような、そんな感覚で撮影しておりました。今まで見たことのないようなとても珍しい街並みで、そういった街並みを見ることが出来たのはファイト監督のおかげで、ここで御礼申し上げたいと思います。このような街、非常に珍しい光景ですので、残念ながら取り壊されてたしまって今はないのですが、スクリーンの上で保存できたことはとても大切なことだと思っています。東京へ来られてとても嬉しく思います。感謝しております。また、みなさんにも今日ご覧いただけて非常に有り難い気持ちでおります。
ブラ物語
 
サヨラ・サファーロワさん:みなさん映画をご覧いただき、また、こちらへお集まりいただき本当にありがとうございます。みんなこうやって勢ぞろいして東京へ来るのは初めてなのですが、みんなと一緒にいられてとても嬉しい気持ちでいます。そしてこのようにして、日本へ来ることが出来て、またみんなに見てもらうことが出来てとても嬉しく思います。みなさんの表情を伺いたいところなんですけれども、ちょっと照明が明るくて見えないのですが、いずれにしてもとても楽しいひと時を過ごしております。ありがとうございます。
ブラ物語
 
ボリアナ・マノイロワさん:みなさんこんにちは。東京へこのようにしてみんなでやって来られて大変嬉しく思います。このような「魔法の映画」を携えてやって来られて嬉しいです。なぜ魔法だと思うかというと、魔法というのは我々の日常の中に、そこかしこにあるからだと思っているからです。劇中でもブラジャーが飛んでいく、風に吹かれて飛んでいくシーンがありましたが、今まで見た中でも1番美しいシーンだと私は思っています。風に飛ばされたブラジャーについてきて、私たちははるばる日本にやって参りました。魔法についてきてこのように日本にやって来られてとても嬉しいです。
ブラ物語
 
矢田部PD(司会):ありがとうございます。皆さんから質問をお伺いしたいとおもいます。
 
Q:この作品の主役はブラだと思うんです。独特のかわいいデザインとカラーリングのあのブラが一番のメインになったのは何故ですか?
 
ファイト・ヘルマー監督:実はいろんな下着会社にスポンサーをお願いしたのですが、その願いは叶わず、結局友人にデザインをお願いしました。友人に対して発注してお願いしたことは、「洗練されたデザインをよろしく、あまりきつく際立ったものではなく、ソフトで魔法を呼び込めるようなデザインを」とお願いして作ってもらいました。
 
Q:映画ではセリフがありませんが、その変わりに映画中にラッパを吹いたり打楽器を演奏したりという場面が印象的でした。セリフがない代わりに音楽や音で補った部分があったのか気になりました。
 
ファイト・ヘルマー監督:これは多くの皆さんが言うことなのですが、「セリフのない映画の場合は音楽をふんだんに使うべきだ」とよく言われます。僕はこれの逆のことをしたくて、劇中の音を開放してやりたかったんです。普通であれば映画にはセリフがあるか、無い場合には音楽があるかなんです。それを使わなくとも、我々の身の回りにある音っていうのはとても豊かな、いろんな音があると思うのです。ですので、俳優たち、キャスト陣に関して言えば、彼らの声であったり、呼吸であったりこれも大事な音であって、今回これをすごく意識して作りました。撮影を終えて編集段階に入ってから、わざわざキャスト陣を呼び戻してアフレコをしてもらいました。何を吹き込んでもらったかというと彼らの呼吸です。撮影中はブームマイクを上にかざしているのでちゃんと音を拾えないのですが、呼吸をわざわざ後から吹き込んで上に乗せました。というのも呼吸一つでもあらゆる表現ができると思っているのです。音楽、セリフがなくともとても豊かな空間があると思っています。ポストプロダクションは数ヶ月がかりで完成していったのですが、皆さんが後から吹き込んでくれたいろんな呼吸だとか、「スー,ハー(呼吸している音)」と芝居はうまくなくてすみません、がそういった皆さんの呼吸をたくさんのデータトラックに収めて、それをミックスして皆さんがご覧になったようなああいう形に仕上がりました。
 
Q:会話や文字が殆どない作品を制作した理由は。
 
ファイト・ヘルマー監督:セリフのない映画の演出に関してなんですけれど、私はセリフなしの、そして映像で語っていくということがシネマの心髄(しんずい)であるべきだと思っています。そして言葉、セリフがないと言語の壁を越えられるという、そういう意味ですごく便利というか良いんですよね。このような通訳や翻訳をしたりという煩わしさもないですし、皆さんが字幕を読まなくていいですし、吹替をしなければいけないという煩わしさもないわけです。ですから、セリフのない映画というのはチャレンジングなところもありますが、それがうまくいくことで幸せになれます。今回は非常にシンプルなストーリーでしたが、何か精神的に深みが感じられるような作品に仕上がっていれば嬉しいです。
 
ドニ・ラヴァンさん:いわゆる言葉を発しなくても、感情や意味を伝えることができますし、自分はそういう演技の仕方が大好きです。
 
Q:「そしてその後皆幸せに暮らしました」という感じの物語が多いと思うのですが、この作品では近くにいるのに見つからなかったというストーリーにしたのは何故でしょうか。
 
ファイト・ヘルマー監督

チュルパンさん演じる女の子は魅力的な女の子ですが、主人公はブラの持ち主を探しているわけではなく、主人公が探していたのは家族なんだと思います。それは妻でも娘でもいいのですが、家族を持ってはじめて村の人々から受け入れられる、尊敬を得られる、そういったコミュニティーです。彼はセックスを探し求めているわけではないんです。彼が探し求めていたのは、完全なる幸せで、それが最終的に見つかったとそういうストーリーだと解釈しています。セックスがいけないといっているわけではないんですけども。そういう話だと思っています。
少年との釣りのシーンが途中ありますね。ここがうまく描くことができたかどうか心残りなんですが、おじいちゃんたちがお孫さんたちと釣りに行くというのが村の風習で、主人公の彼は一緒に釣りに出かけることができる孫を見つけたと、ある意味ショートカットで見つけられたんです。
 
Q:(アゼルバイジャンの有名な歌を披露。会場拍手)私はアゼルバイジャンから来ました。素晴らしい作品をありがとう!なぜ、アゼルバイジャンを舞台にしようとしたのでしょうか。
 
ファイト・ヘルマー監督:私はアゼルバイジャンが大好きです。残念ながら、アゼルバイジャンの政府はそう思っていないようですが。なぜかというと、現代化、再開発を進めようとしているので、私のように古い町並みを撮影するようなフィルムメーカーはどうやらお好きではないようです。ですから、撮影するのは色々大変でした。2008年にも『Absurdistan』というアゼルバイジャンで撮った映画があります。その撮影経験を通じて友人ができたのですが、やはりもう一回アゼルバイジャンで撮りたいという気持ちがずっとありました。
あそこに登場する、上海地区と言われているところなんです。もちろん、中国とは何の関係はないのですが、まるで中国のようだと地元の人は考えているようです。そんなことはないと思うですが…。そういうことで、上海地区と言われているところなんです。本当に皆ああいう生活をされているんです。早く逃げ去らないと本当に汽車にひかれてしまう、そういう生活を送っているわけです。ですからこういう町を背景にストーリーを作りたいと思いました。主人公として、電車の運転手さん、車掌さんを据え置くのが相応しいだろうと考えました。
どういう風にアイディアが浮かぶのかという話をすると、寝たり、時にはお酒を飲んだり(笑)。働いたりしながら、アイディアを膨らましているわけですけども、そこへ俳優たちも色々なアイディアを提供してくれて、ですから最終的に一人の仕事ではなく、皆のアイディアを盛り込んだような、コラボレーションが作品に仕上がっていく、そういったことが多いです。今回もそうです。

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