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2018.11.13 [イベントレポート]
「60歳の節目に日本の原風景のようなところで、奥行のあるものを撮りたかった」11/1(木):Q&A『半世界』

半世界

©2018 TIFF

 
11/1(木)、コンペティション『半世界』上映後、阪本順治監督をお迎えし、Q&A が行われました。
作品詳細
 
阪本順治監督:こんにちは。先月、60歳になりまして。日本で60というひとつの節目の年にこうやって皆で作り上げた映画が華やかな場所でお披露目できるのは本当に嬉しく思います。
 
矢田部PD(司会):ありがとうございます。60歳になられたというふうにおっしゃいましたが、この作品の前にキューバを題材にした海外での撮影が長期間ありましたが、60歳を迎えられるといった中で、一旦日本に帰って自分の世界を見つめなおす時期という意味でこの『半世界』に取り組まれたと部分はあったんでしょうか。
 
阪本順治監督:そうですね、ここ5、6年の自分が作った作品を海外でロケするということが多くて、まあ特に前作の『エルネスト もう一人のゲバラ』はキューバで9割方撮ってますし、その前の『団地』という映画は日本で撮りましたけど、主人公が宇宙に行くっていう話で、いつもどこかに行ってたので。それで、久しぶりに自分の地元、舞台は三重県で地元ではないですが、日本の原風景のようなところで、小さな話でよいので、奥行のあるものを撮りたいなと思いました。反動っていうと前の作品に失礼ですけど、自然な流れでした。
 
矢田部PD:地元である日本に戻って、少し小さなご自分の物語を紡いでいく中で稲垣吾郎さんがここに参加されてきたというのはどのようなタイミング、プロセスを経たんでしょうか。
 
阪本順治監督:稲垣くんたちには何も伝えず、6月頃から考えてましたね。「72時間ホンネテレビ」だったかな。オダギリジョーくんと一緒に乱入というか、通りすがりのように出演したときには、すでに稲垣くんには脚本が渡ってましたね。僕の勝手な思いが先行して、「いや、結構です。」って言われてたらそれで終わってたと思いますが、「僕でよければ」っていうことで実現しました。ちょうど『エルネスト』が一段落してから撮ってますね。そういう感じです。
 
矢田部PD:ありがとうございます。という背景をお話しいただきました。
 
Q:劇中で「39歳」と呟くシーンがありましたが、39歳という歳にこだわったその経緯をお聞かせただければと思います。
 
阪本順治監督:女性の方がどの年齢のタイミングで何をどう思うのかっていうのは分からないんですけど、意外と男、野郎って39っていうのがないですかね。
 
矢田部PD:ありますね。
 
阪本順治監督:勝負をかけるのか、かけないのか、という瀬戸際。かけるんだったら今のタイミングで勝負かけて、実現は40越えてるだろうなみたいな歳ですかね。僕にとってはそういう年齢で、男性の方全員じゃないですけど。野郎にはちょっとそのラインじゃないかなと思って。自分のことも思い起して39歳という微妙だけどやるなら今で、遅くもなく早くもなくですけどね。
 
 
 
※※※以下、内容についての言及があります。お読みの際はご注意ください。※※※
 
 
 
 
 
 
矢田部PD:39歳のお友達2人の長谷川さんと渋川さんをご起用された背景と何か撮影のエピソードなどありましたら教えてください。
 
阪本順治監督:長谷川くんはアクションシーンがありましたよね。凄い形相の。本人曰く、撮影したことももう覚えてないらしくて。かなり私も追い詰めて、東京でも何度もリハーサルし、実際の撮影現場でも前日にリハーサルをしました。当日には、スケジュールがおして日がどんどん傾いてきたんですよね。僕らも、もう早くしろ早くしろばっかりになりまして。あの最後のものすごい形相は、たぶん僕に向かってますよ(笑)。「カットOK!」と言った瞬間、帰っちゃいましたから(笑)。結局ね、その日まで約3か月かな?アクションシーン終わるまでと決めて、3か月断酒してたんですよ。お酒を断ってたんです。そうやって自分を追い込んだ末に当日また僕に追い込まれて、とうとうあの信じられないような形相がでてきたのです。
 
矢田部PD:確かに、鬼気迫るシーンでした。
 
Q:監督としての狙いといいますか、綺麗な場面を入れてこういう作品を作られたのかを教えてください。
 
阪本順治監督:映画はセリフという言葉もあれば、風景も言語なんですよね。そういう意味では俳優さんが映っていようが映ってなかろうが、背景であったり風景というのは時間経過のために使うとかではなくて、何かのシーンの心象を伝えるような風景にしたかったし、幻想的なシーンとかも、そこに何を感じていただいても構わないのです。作り手が意図を持ってやったこともあります。
葬儀シーンも、本来の台本上は真っ黒な雨雲の、どんよりとした中の雨のつもりだったのですが、当日まともに晴れまして、それであのセリフを入れました。それで良かったと思ってます。勝手に虹も出たし。虹も日の光も向こう側に行った者の存在としていいじゃないかということで、そのまま撮りました。黒い傘も全部狙いで、美術部さんに、傘は全部黒、コントラストを狙うのだと。昔の市川崑さんの『満員電車』という映画でものすごい真っ黒の何百人もの群れを上から撮ってるんですよ。それをちょっと真似てみようと思って。そういう風にしか答えられないのですけど、風景も含めていろいろ感じ取ってくれたなら嬉しいです。ありがとうございます。
 
Q:絋が車の中から降りてきた時に物凄い勢いでこっち側に来るような感じで、普通に車から降りるのになぜそのようなスピードで撮っているのでしょうか?
 
阪本順治監督:稲垣くん、車から降りるのが早いんですよ。だからステイカムという手振れがしない機械をカメラマンさんが持って、稲垣くんが降りてくるのに合わせてと引きながら撮るんですよ。稲垣くんが早かったからということで。そのステイカムというカメラの効果もあると思います。付けたレンズとか、カメラマンの素早い動きとかもあると思うんです。
 
Q:池脇千鶴さんを最初から想定されてましたか。
 
阪本順治監督:今の女優さん、30代、40代に近付いても僕にとっては生活の匂いがしないっていうか。池脇さんは生活臭がある。それと俳優としてやっぱり役者は恥をかいてなんぼ、というかね、凄い度胸なんですよ。度胸がいい。その生活臭をちゃんと漂わせてくれる。男優はいくつになっても一人の人間としての役があるんですけど、日本がダメなのは女優さんは必ずある年齢重ねると、誰かの妻とか、誰かのお母さんとか誰かのおばあちゃんとか、誰かの何かになってしまうんですよね。でもそれを演じつつ、ひとりの女を見せてくれる、ひとりの人間として存在してくれるっていう、その信用度です。僕は池脇さんに演出したのはひとつですね。「もう少しゆっくりしゃべりましょう」。これだけです。
 
Q:イメージのインサートシーンが2回ありました。
 
阪本順治監督:自由に解釈してもらっていいんです。僕が言ってることが答え、正解とは限らない。そういうつもりでやったっていうだけです。
 
矢田部PD:この作品は来年2019年2月に公開予定ですので、皆様ぜひまた足をお運び下さい。
 
阪本順治監督:僕の癖で色々抽象的な挿入とか、ついやってしまう。その部分の受け取り方はみなさん自由で、もうひとつ物語を作っていただければありがたいです。この映画は3回目が一番面白いです。2回目はまだちょっと分からないんで。ホントは5回って言いたかったんですよ(笑)。劇場で公開されましたら、また足を運んでいただければありがたいです。

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