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2018.11.08 [イベントレポート]
「何かのメッセージを発信することの責任があります」10/30(火):Q&A『リスペクト』

リスペクト

©2018 TIFF

 
10/30(火)、CROSSCUT ASIA #05 ラララ 東南アジア『リスペクト』上映後、トレブ・モンテラスII監督、俳優のアブラさんをお迎えし、Q&A が行われました。
作品詳細
 
トレブ・モンテラスII監督:皆さん、本当に時間を割いて映画を観に来てくださってありがとうございます。東京国際映画祭参加は初めてであるとともに、私は東京を初めて訪れました。とっても気に入っています。特に食事が。
 
石坂PD(司会):監督、この『リスペクト』は去年のシネマラヤ映画祭で賞をいくつ獲ったんでしたっけ?
 
トレブ・モンテラスII監督:7つの賞をいただきました。撮影、音響、編集、観客賞、そしてネットパック審査員賞ですね、国際批評家賞、そして最優秀作品賞と、助演男優賞ということで、ドク役のディド・デ・ラ・パスさんが受賞しました。
 
石坂PD:アブラさんは映画出演はそんなにたくさんないと伺っていますけれども。
 
アブラさん:主演は初めてです。普段はラッパーですが、監督がラップ文化というものをより広く、多くの人に届けたいということで、この映画を撮ってくれました。
 
Q:ラップと死をどうやって融合させようと思ったのかということを伺いたいです。
 
トレブ・モンテラスII監督:2010年に私が大学で論文を書いているときに出会ったのが、詩の朗読、朗読というかバトルですね。詩で互いに競うという。それで、私も参加していたんですが、同時にラップバトルも盛んになってきたんですね。ラッパーの団体というのがあって、そこでオンラインのスターが生まれました。その動画が広がって。この映画にも出ているBreezy’z、そしてここにいるアブラさん、この二人が大スターとしてかなり認知度が上がったんですね。何か詩と融合した映画を作りたいな、と思ったんですが、2016年にドゥテルテ大統領が生まれて、麻薬に対する撲滅戦争というかそれを繰り広げた。それが容疑者であっても容赦なく処罰する、というそのことに対するメッセージをラップの力を使ってフィリピンの人と一緒に共有し、伝えられるのでは、ということで、この映画が生まれました。
 
石坂PD:はい、ありがとうございます。一つ忘れていまして、監督の長男の方がいらっしゃっているということで、エデン君、どこかな?
 
通訳:監督は二世ですが、三世となる、エデン君がいます。
 
エデン君:皆さん、父の映画を観て楽しんでくださったことをとても感謝しています。そして皆さんが非常に熱意を持ってこの映画を迎えてくださってるな、ということを僕は感じました。
 
石坂PD:すごいですね。お父さんへの“リスペクト”を感じますね。
 
Q:次回作について
 
トレブ・モンテラスII監督:次の作品は、エンターテインメントでありながら社会・政治性を持ったものになると思います。それが悪と善を扱っている、例えばアクションであればそういった中に反映出来るのではないかと思います。やはり私はアーティストとして映画を媒体として手掛ける者の責任として、やはり世界の中で何が起きているかということに関してやはりコメンタリー、何かのメッセージを発することを責任だと考えております。それがラブコメであり、ホラーであり、映画を使って何か言えるならばうれしいことです。ただ、観て楽しめる、それによってお客様としっかりエンゲージする、映画の世界に入っていただく、ということももちろん欠かせないことです。
 
石坂PD:アブラさんはこの映画を演じられるときに、どんなところに気を付けて役を作って行かれたのか、ちょっと教えてください。
 
アブラさん:準備は何もしませんでした(笑)。17歳の頃の自分を思い出して、そうしてあとラップのスキルをちょっと落として、加減して、あまり人生経験を反映させないように、ということは気を付けました。あとはストーリーによく自分を順応させるということですね。あとはこの役柄がですね、僕と(演じた)ヘンドリックスの生い立ちとは違うものですので、その点は気を付けました。ただ気持ちはわかります。貧困というのはフィリピンでは本当に目に入るところにある現実です。ですが、いつも改善される余地がないです。影響力がある団体としてが発信していることを経由して、今のフィリピンの状況、そして政府に対する提言やコメンタリーをする機会だな、とは思いました。そもそもラップがなぜ生まれたかというと、抑圧に対する抵抗ですよね。これは映画ですけれども、正にラップのエッセンスでやるべきことを映画でやっています。
 
Q:私はフィリピン人として言葉が無いほど今まで観たフィリピン映画で最高ではないかと感じました。質問としては、マルコス時代の戒厳令の様子、犠牲者の話を盛り込んでいるわけですが、これは実際にどなたかに話を聞いたのでしょうか?若い世代のヘンドリックスと老詩人のキャラクターやストーリーのインスピレーションはどこから来たのでしょうか?
 
トレブ・モンテラスII監督:老詩人は実際にマルコス政権時代を経験した複数の詩人から私が聞いた話を盛り込んだ形になります。そしてヘンドリックスは私がリサーチをしている間にラッパーのコミュニティーで色々見聞きした人を融合させたキャラクターです。そして実際に撮影をしながら、ストーリー的にも脚本的にも順応して変えた部分があります。独裁者であるマルコス前大統領を英雄墓地に埋葬することをドゥテルテ大統領が許可したということがちょうど撮影中にアナウンスされたのでそのことも盛り込みました。
 
Q:現在の状況と同時に並行して70年代のマルコス政権のことを盛り込んでいましたが、何か難しい局面、何か克服しなければならない部分など何か問題に直面しましたでしょうか?そして監督は国内で、そして国際的にどういったことを目標にやっていきたいと思われていますか?
 
トレブ・モンテラスII監督:撮影中に起こったことをお話しますと、ロケ地は警官や自警団が、麻薬に絡んでいると思われる人を殺害しても良いと許可されている地域で、午前3時頃、ヘンドリックスがラップバトルに負けて家に帰るというシーンを撮っていたら、覆面警官が容疑者と目している犯人を追いかけていて、お互いに叫んでいるのが聞こえました。幸いなことに容疑者が銃で撃たれることは無かったのですが、その後その人がどうなったのかわかりません。
それ以降、私たちはこの撮影のことを秘密裏にする必要があると思いました。ラップを扱った映画であるということはシネマラヤ映画祭でも伝えていたのですが、こういった活動に関して触れているといったことは告知しないでおきました。というのも、私たちの撮影しているエリアでは夜でも警察官がパトロールという形で威圧するようなことが撮影の最後まで行われていました。幸い私たちの誰の身にも危険が及ぶことはありませんでしたが、映画の情報がオンラインで流れるとネット上で私たちを攻撃するものが現れましたが無視していたら収まりました。多分、麻薬紛争というかこういった争いを取り込んで撮った初の映画ではないかと思います。その後こういった動きが表面化してきたので、意義はあったと思います。
 
アブラさん:国内でも、国際的にも、伝えたいメッセージは一つです。私はラッパーという立場でフィリピンで起きていることを伝える。もちろんこれはスラムで起きている素人のラップ合戦でしたので、役作りとして実力を十分発揮せずにいる部分もありました。自分の役割というのは、取り繕わずにフィリピンのありのままをラップを通して伝えることだと思っています。

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