10/30(火)、アジアの未来『冷たい汗』上映後、ソヘイル・ベイラギ監督をお迎えし、Q&A が行われました。
⇒作品詳細
ソヘイル・ベイラギ監督:皆さん、こんばんは。ようこそ。私の映画にいらしていただいてありがとうございます。皆さまのご質問というかコメントを待っております。
石坂PD(プロデューサー):本作は、イランで今公開中とお聞きしましたけれども、成績はいかがでしょうか?
ソヘイル・ベイラギ監督:今公開7週目なんですけれども、もう1週くらい延びると思います。大変評価をいただいてお客さんも入っていますけれども、こういった映画はなかなかこんな長く、ロングラン出来ないのでうれしいです。
石坂PD:やっぱり女性の観客からの支持が多いですか。
ソヘイル・ベイラギ監督:そうですね、こういうテーマなので、女性のお客様が多いです。
Q:イランにおけるSNSの状況も踏まえつつ、この作品の中での描き方について教えていただければと思います。
ソヘイル・ベイラギ監督:今ですね、イランの社会の中ではSNSっていうのは一番活発なメディアと言えるくらい人気です。自由に自分の意見を載せるとなると、SNSを使いますね。特にテレビとか、そういった映像関係は規制がかかるので。SNSの場合は、そういう規制がかかっていないので、みんな自由に色んな意見を書いたり、何か問題があると必ずSNSで発表したりしていますね。この映画の中のメインキャラクターも自分の問題をSNSで説明していけば、みんな助けてくれるんじゃないかなと思って載せるんです。
Q:ひとつめは、制作のきっかけになった直接の事件というか出来事というのがあったら教えていただきたいです。ふたつめは、頭にかぶるやつヒジャブは、家庭の中でははずしたりしていいと思うんですが、やっぱりカメラがあると出来なかったのでしょうか。タイのチームとイランのチームが試合しますけども、タイの方もヒジャブをかぶっていますが、それはイランで試合をしたのでつけざるを得なかったという事情だったのでしょうか。
ソヘイル・ベイラギ監督:ひとつめの質問ですが、あるときひとつのニュースを読みました。そのニュースの中では、国から試合に行く奥さんの許可が取れなかった男性の話が載っていました。それをアイデアに、そこからは自分の想像で書いていきましたが、最初のアイディアはこのニュースから来ています。
つぎに、ヒジャブという頭にかぶるスカーフのことなんですが、これは規制がありまして、ヒジャブを守らなければ、自分の映画は公開することは出来ないのです。例えば家の中で女性を描くことでももちろん、ヒジャブをかぶってもらわないと映画を皆さんに観せることは出来ないんです。社会の中では、女性は必ずヒジャブをつけないといけないので、スポーツ界でももちろんそうなんです。特にフットサルの場合は規制がすごくありまして、映画でご覧いただいた通り、ヒジャブを守らないとフットサル試合は出来ないんです。他の外国の方の場合でも、カメラが入っているフットサルの試合では、その方たちもヒジャブを守らないといけないんです。カメラがない場合は、ヒジャブを守らなくてもフットサルの試合は出来ます。
石坂PD:イランの女子フットサルは本当に強いですよね。何度もアジアチャンピオンになっていますけれども。
ソヘイル・ベイラギ監督:そうですね。とても厳しい状況の中でフットサルをやっています。厳しい状況だからこそ、人間が強くなるかもしれないと考えています。フットサルは2回くらいアジアの大会でチャンピオンになっています。
Q:女性が働ける機会というか、賃金の高さとか、イランの状況を教えてください。
ソヘイル・ベイラギ監督:アフルーズが自分の夫に頼っているのは、海外の大会に出たるために許可をもらわないといけないので、旦那さんの言うことを聞かざるを得ないのです。そういう必要性があって、彼の言うことを聞いていますが、イランの中では女性もとても強いので、様々な仕事に手が上がったりしています。アフルーズの夫はアフルーズを独立させたくない。アフルーズが独立したら彼が困るので、なかなか離婚を許可しないんですよ。アフルーズは強い女性なので、独立を手に入れたら自分よりもっといいポジションにいられるんじゃないかということが、彼が許せないです。
Q:夫には嫉妬があると。
ソヘイル・ベイラギ監督:はい、ジェラシーです。
Q:これは国家的なパワハラ、あるいはセクハラのようにも見えるんですが、イランでの#MeTooのような問題を、監督はどのようにお考えなのですか?
ソヘイル・ベイラギ監督:伝統的な考えを持っている男性は、家族のなかでパワーをもっていますが、平均的にはそういう人は少ないかなと思います。それと、イランの女性はひとりひとりは静かに#MeTooを頑張っていますが、外に出てデモをやっている人もいます。
Q:イランではすでに公開中ということで、この映画を観てSNSなどの反響はどうだったのでしょうか。実際に本作ののように状況を変えようというような動きは起こっているのでしょうか。
ソヘイル・ベイラギ監督:SNSの反響はとてもポジティブでしたが、映画の主題がセンシティブだったので、大きなPR活動は許されませんでした。ですから一般の人たちが口コミですばらしい宣伝をやってくれて、映画をここまで守ってくれたんです。実際事件が起きたとき、大きなニュースにはなりませんでした。SNSでみなさんの怒りやコメントがなければ、誰も事件を知ることができなかったので、そういう意味でもSNSの力は偉大で、彼女も助かったのです。
Q:主人公のチームメイトも問題を抱えているように思えたのですが、そのあたりの関係性がよくわからなかったのですが教えていただけますか?
ソヘイル・ベイラギ監督:彼女は個人的には問題はなかったかもしれませんが、あとから大きく心が揺れるというのは、友だちを裏切らなければならなかったということです。権力者は仲のよい二人を切り離すことができる、権力とはそういうものだということです。
Q:宣伝が大変だったということですが、映画が検閲されたりカットされたりしたところなどあったのでしょうか。
ソヘイル・ベイラギ監督:基本的には検閲はなかったので、シーンのカットもありませんでした。ただ指導してくる機関があって、そこで映画を観てから一般公開の許可をくれるんです。そこではところどころ、この言葉遣いは良くないからセリフを変えてくださいと言われ変えたことはあります。結果は、この映画の上映許可は下りたのですが、そのあといい宣伝をさせてもらえなかったり、劇場をなかなか開けてくれなかったりということがあって、そういう意味ではこの映画を抑えようとしていましたね。それとエンディングは、最初は違っていたんですが、自分が考えた上で変えました。これは検閲とは関係ありません。