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2018.11.07 [イベントレポート]
「社会の激動の中で、個人がどのように生きたのかを描きたかった」10/29(月):Q&A『詩人』

詩人

10/27(土)開催されたQ&Aの際の写真です
©2018 TIFF

 
10/29(月)、コンペティション『詩人』上映後、リウ・ハオ監督、女優のソン・ジアさんをお迎えし、Q&A が行われました。
作品詳細
 
リウ・ハオ監督:今日は映画を観に来てくださって心から感謝を申し上げます。
 
ソン・ジアさん:特に今日は月曜日、月曜日の午前中から皆さん観に来てくださってありがとうございます。
 
矢田部PD(司会):この作品は80年代~90年代の頭を背景にしてますね。この時代を背景にする物語を作ろうと思われた動機、きっかけを教えていただけますか。
 
リウ・ハオ監督:そうですね、1980年代~90年代にかけての中国というのは、中国の特に現代史の上で極めて重要な時期でした。この時代というのは、それまでの社会主義の計画経済から市場経済へと移行するちょうど過渡期にあたるわけですね。このような社会の激変の中で、個人の運命も大きく変わっていくことになります。そういう中で、私は個人がどのように生きたのかということを描きたいと思いました。私自身もこの時代を生きてきた経験者でもあり、またその時代を記録する者でもあるわけです。
 
矢田部PD:そしてソン・ジアさん。この映画に参加なさった経緯を教えていただけますか。
 
ソン・ジアさん:この映画は、去年の今頃撮影されました。その前に脚本を読ませていただいたのですが、今も覚えているのは脚本を読んだ瞬間の気持ちです。やはり女優としては、素晴らしい物語や素晴らしい映画の脚本に出会ったときはものすごく気持ちが興奮して幸せを感じます。
監督とプロデューサーとお会いして、いろいろな話を伺って、是非参加したいと思いました。そして、私が演じたチェン・フイの夫役リー・ウーを演じてくれるのが俳優のチュー・ヤーウェンさんと聞いたとき、私のファンの皆さんはよくご存知だと思いますけれども、彼と私は10数年前に初共演してからずっと仲の良い友人だったので、この作品をうまく演じられる自信が沸いてきました。
 
Q:主人公の炭鉱労働者から詩人となっていきますが、この話のモデルはいましたか?また、奥さん役を演じるにあたりソン・ジアさんはどのように役作りをしたのかをお聞きしたいです。
 
リウ・ハオ監督:この詩人のリー・ウーの特定のモデルがいるわけではなく、当時の無数の因子から作りあげて行きました。当時、詩を書いたり、文学に携わったりしてなんとか自分の運命を変えたいと思っていた人がたくさんいたんですね。そのような人たちの集合体がリー・ウーであるわけです。私自身の影もそこにあるわけです。
 
ソン・ジアさん:私が演じたチェン・フイは、この映画のなかでは具体的に詩を書いていた詩人ではないですが、特にこの精神世界のなかで詩人であったと私は捉えていました。
 
Q:監督は、自分の体験された時代を描いたとおっしゃっていましたが、どのくらい監督自身の体験が反映されているのでしょうか?またソン・ジアさんは、現在の輝かしい美しさとは裏腹に映画の中では貞淑な夫想いの地味な女性を演じられましたが、一番力を入れて演じられたのはどこでしたか?
 
リウ・ハオ監督:この脚本は実は十年前に書いたものなんです。この脚本を書いた当時、私は上海で仕事をしていました。ちょうど主人公リーのような雰囲気で、詩を書いたり、文章を書いたりして生活していました。その当時、生活や生きる道を変える手段というのは非常に限られたものしかありませんでした。
 
ソン・ジアさん:役者としては、映画をファンに観ていただいて、本当によかったと言ってもらうのが一番、最高に嬉しいことなんです。今ご質問してくださった方のように、本当に心からよかったとお言葉をいただいて私も幸せな気分になりました。ありがとうございます。どこのシーンが一番好きかと聞かれると、私が出ているシーンすべてが好きです。本当に美しい映画になったと思います。それが果たして残酷な美なのか、あるいは理想を実現できなかった心残りの美なのかわかりませんが、先ほど映画を観ていて、自分が演じていたことをすっかり忘れてしまうほど観客の一人として、この映画の中で酔いしれていました。
 
Q.:ソン・ジアさんに質問です。日本に来て何か日本料理を召し上がりましたか?
 
ソン・ジアさん:こうやって東京に来ることができて本当に嬉しいです。ご質問もありがとうございます。今回作品を持って、東京国際映画祭に参加することができ、とても嬉しいです。そして、撮影が一年前だったので、一年ぶりにリウ・ハオ監督にお会いできてとても嬉しいです。東京国際映画祭に心から感謝します。焼き肉が好きですね。
 
Q:私たち夫婦なのですがソン・ジアさんの大ファンで上海から二人で観に来ました。リウ・ハオ監督おめでとうございます。
 
リウ・ハオ監督:(上海語で)ありがとう。
 
 
 
※※※以下、ラストシーンを含めた内容についての言及があります。お読みの際はご注意ください。※※※
 
 
 
Q:ラストで詩人に死なないでほしかったです。生きて新しい世界が来たのを彼に見てほしかった。
 
リウ・ハオ監督:ありがとうございます。
 
矢田部PD:死なない選択肢はありましたか?
 
リウ・ハオ監督:そうですね、続編撮りましょうか、と今プロデューサーに言いたいと思います。

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