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2018.11.05 [イベントレポート]
「そんな人生も愛していこうよ」10/27(土):Q&A『 メランコリック 』

メランコリック

©2018 TIFF オープニングイベント・レッドカーペットに登壇した田中征爾監督、皆川暢二さん、磯崎義知さん、吉田芽吹さん、羽田 真さん、矢田政伸さん、浜谷康幸さん、Stefanie Arianneさん、新海ひろ子さん、山下ケイジさん、大久保裕太さん、蒲池貴範さん

 
10/27(土)日本映画スプラッシュ『メランコリック』上映後、田中征爾監督、皆川暢二さん(俳優/プロデューサー)、磯崎義知さん(俳優)、吉田芽吹さん(女優)をお迎えし、Q&A が行われました。
作品詳細
 
矢田部PD(司会):大きな拍手でお迎えください。『メランコリック』のゲストの皆さまです。皆川暢二さん、磯崎義知さん、吉田芽吹さん、そして田中征爾監督です。皆さま、ようこそ東京国際映画祭にいらっしゃいました。お一人ずつからご挨拶を頂戴したいと思うのですけれども、まずは皆川暢二さんからお願いいたします。
 
皆川暢二さん:主演兼プロデュースという形で鍋岡和彦役で出演しました皆川暢二です。本日は本当にお忙しい中ご来場してくださりありがとうございました。
 
矢田部PD:ありがとうございます。続きまして、磯崎さん、お願いいたします。
 
磯崎義知さん:松本役を演じさせていただきました磯崎義知と申します。本日は本当にお忙しい中、劇場に足を運んでいただいて誠にありがとうございます。
 
矢田部PD:ありがとうございます。髪は黒く戻られたんですね?
 
磯崎義知さん:はい。社会復帰です(笑)。
 
矢田部PD:続きまして吉田さん、お願いいたします。
 
吉田芽吹さん:副島百合役をやらせていただきました吉田芽吹です。本日は、休日のまったりしているであろう時間の中、こんなにたくさんの方が来てくださって嬉しいです。どうもありがとうございました。
 
矢田部PD:田中監督からも一言お願いいたします。
 
田中征爾監督:冒頭で電話しながら階段を上ってくるIT社長役をやりました田中です。本日は本当にありがとうございました。楽しんでいただけたでしょうか?というお話をこの後存分にさせていただければ嬉しいです。ありがとうございます。
 
矢田部PD:すごく意外性に富んだ、ビックリした展開になっていく脚本に、とてもとても堪能いたしました。監督が脚本クレジットになっていましたけれども、One Gooseの3名の方々で立ち上げたプロジェクトということで、脚本は3人で揉みながらだったのか、やはりこれはもう田中監督が作り切った物語だったのか、というあたりからお聞かせいただけますでしょうか?
 
田中征爾監督:脚本家個人としては非常に悲しいことに、完全に3人で揉みながらです。そこまでの才能はなかったです。
 
矢田部PD:皆川さんはご自分の役をご自分で書かれたような…出演することはもう決まっていたんでしょうか?磯崎さんと共に。
 
皆川暢二さん:そうですね、舞台挨拶の時に発起人という言い方をしてくれたと思うんですけど、順序で言うとまず田中監督に声を掛けて、そのあと、磯崎義知君に声を掛けて、3人が核となってやろうということで話して。もちろんこの二人は、最初はダブル主演でやりたいな、と思って声を掛けさせていただきました。
 
矢田部PD:田中監督、最終的にはスリラーで押し通すのではなくて、友情物語、家族の物語に着地させていこうというコンセプトは最初からあったのでしょうか?もし『メランコリック』というタイトルを付けた理由にそれが関係していたら、そこも教えていただけますでしょうか?
 
田中征爾監督:僕は元々人間ドラマが一番得意としている分野だったんですが、皆川君と磯崎君からのオファーとして、アクション的な要素も入れたいということで、結果としてこういう風になり、僕の中では意図してこういうテイストになったというよりは、行き着いた場所がここだったっていう言い方が正しいですね。
 
Q:皆さん個性的な役柄ですが、このキャスティングの経緯に何かエピソードやこだわったところがあればお聞かせいただきたいです。
 
矢田部PD:皆川さん、お答えされますか?
 
皆川暢二さん:キャスティングはもともと舞台とかを始めたころ多くやっていて、それで繋がりが結構あったりして、自分の頭の中にある人たちを思い浮かべながら当てはめて行き、年齢層的に足りない役、東(あずま)っていう役はオーディションをさせていただき、羽田 真さんという役者さんが入ってくれました。なので、基本的には自分がメインで色々思い付く人を当たっていって、あとは各々が思い付く人たちをミックスさせていってキャスティングした、という形です。
 
矢田部PD:吉田さんはどのような形でこの作品と出会われて、参加されたんでしょうか?経緯を教えていただけますか?
 
吉田芽吹さん:私は4年前に皆川さんと舞台で共演させていただいておりまして、まず、『メランコリック』が以前に短編で作られことを知っていたのですが、「今度長編を撮ることになったから出てくれないか?」って言ってくださって、出演させていただきました。
 
矢田部PD:即答だったんですか?
 
吉田芽吹さん:そうですね。舞台を結構中心でやっていたので、スケジュールの関係でマネージャーさんと相談する間ちょっと待っていただきましたが、事務所の人に「吉田さんはどうしたいの?」って聞かれて、「ぜひやりたいです」ということでやらせていただきました。
 
矢田部PD:ありがとうございます。
 
田中征爾監督:キャスティングに関してですが、ステファニーとか外国人の女性の役のキャスティングには、仲良くしているエイジ・レオン・リーという方にも協力していただきました。
 
矢田部PD:ありがとうございます。続きましていかがでしょうか?
 
Q:銭湯を舞台にしようという風に考えられた、その着想の部分を教えていただければと思います。
 
田中征爾監督:実は、第一稿時点では、銭湯ではなかったんですね。どこにしようかって考えた時に、実は磯崎君がアクション・コーディネートもやってたりして、ちょっと人殺しに精通してるところがあって…
 
磯崎義知さん:語弊があるから(笑)。
 
田中征爾監督:銭湯は、死体の処理として合理的な場所じゃないのかっていうところなんですよ。なんで、こここそがまさに、先ほど僕が申し上げた、一人で書き上げる才能がなかったという最たる部分ですね。
 
矢田部PD:磯崎さんは普段から殺しにふさわしい場所のことを考えたりしてるんですか?(笑)
 
磯崎義知さん:いや、普段、殺しの場所に関してはあまり考えてないんですけれども(笑)、たまに考えるのは、街を歩いてて、すれ違う人が襲ってきたらどうしようとか、そういうことは考えるんですけど(笑)。銭湯を思いついた理由として、確かに、すぐに水を流して溶剤さえ使えば血液の鉄分の反応を消せるだろうなとか……
 
矢田部PD:そこが細かいですよ(笑)。
 
磯崎義知さん:裏に窯もあるんで、焼却処分もできるなとか。あと、家から近かったからなんですけれども、使った銭湯が。
 
矢田部PD:撮影に使った銭湯が磯崎さんのご自宅から近い?
 
磯崎義知さん:はい(笑)。
 
矢田部PD:銭湯側は、そんな設定に銭湯を使われちゃ困る、みたいなことはなかったんですか? 使用許可をお願いした時。
 
田中征爾監督:まったく、なかったですねぇ。
 
矢田部PD:そうですか(笑)。ありがとうございます。
 
 
 
※※※以下、ラストシーンを含めた内容についての言及があります。お読みの際はご注意ください。※※※
 
 
 
Q:最後の展開は最初の脚本の時から決まっていたのでしょうか?

 
田中征爾監督:ちょっとかっこいいことを言いますけども、「殺し屋としての人生は死んだ」っていうことなんですよね。結論から言うと、最初から決めてました。主人公に、何かしらのプレゼントを持たせてあげないといけないっていう時に、このヒロインだったりとか、この松本っていう親友っていうプレゼントを僕はあげたかったっていうのもあります。
 
矢田部PD:『メランコリック』というタイトルに込められた想いや意味を教えていただけますでしょうか?

 
田中征爾監督:『メランコリック』、和訳すると「憂鬱」という意味になりますけれども、その「憂鬱」という意味を知らなかった時に、「メランコリック」っていう音の響きにはちょっと可愛さや愛らしさみたいなのがあるっていうのが、この映画の雰囲気を言い表してるなって思ってまして。テーマだったりとかを一言で表現してくれてるワードだなっていうのが決め手ですね。
 
矢田部PD:ありがとうございます。
 

 
Q:主人公たちの行動に対してハッピーエンドが訪れるということが、個人的にはちょっと嫌だと思うのですが、脚本を考える際に何か思うところはなかったのでしょうか?それと、ヤクザのボスを殺したシーンで、代わりの人が現れてみんな不幸せにならないかなとか思ったのですが、そんなことは起こらないのでしょうか?

 
田中征爾監督:まず一つ目の質問ですね、実は映画の中で、なんで彼らが殺されるのかを明かさないっていうのをひたすら繰り返してるんですけど、実はそれは、僕がちょっと仕込んだ寓話的な仕掛けと言っていいんでしょうか、死神のメタファーとして、ああいう設定にしてるんですね。要は誰にでも死は訪れる、理由なんてないっていう寓話として描いているので、彼らがその殺しっていうものをやったことに関しての罰っていうのはなくていいなっていう風に判断しました。もうひとつの、その後にまた誰かが現れてアンハッピーな事態になるんじゃないかっていうのは、まさにおっしゃる通りで、この映画が訴えてるのも、この後また彼らは人生メランコリック、つまり、憂鬱になっていくであろうと。ただ、そんな人生も愛していこうよ、っていうところをちょうどいいところで終わったのがこの映画っていう風に考えていただければと思います。
 
矢田部PD:ありがとうございます。私は単純に、この映画を2回3回と観て、毎回友情物語に涙を流していたんですけれども、さらに深いところを聞けて、一層この映画が好きになりました。監督、この映画の映画祭後の展開などが何かしらございましたら、そのお話とかも最後にしていただけますでしょうか。

 
田中征爾監督:この映画の今後の展開に関しては本当に全く未定でございまして。この東京国際映画祭を出発として、例えば全国で一般公開ですとかっていう風な展開に持っていきたいなっていう願いがある状態です。そのためには皆さんが感想を何かパブリックなオンラインにあげていただくと、頑張って検索しますので、どうかよろしくお願いいたします。
 
矢田部PD:ありがとうございます。そして、発起人の皆川さんも最後に一言お願いいたします。

 
皆川暢二さん:今、監督から作品の内容について色々話していただいたんですけど、つい2年前くらいに何もない状態から始めて、そこからこう積み重なっていき、毎回人前で言うのは、やっぱりこの作品ができたのは、自分たちに協力してくれるスタッフさんとかキャストさん、本当にその人たちのおかげで出来上がったと思ってます。これは今、自分に言い聞かせてるっていうのもあるし、また、これからも本当に、いろんなチャレンジをしてやっていきたいっていうのもあります。またどんどん新たな力が入って面白いことをやれたらいいなと思ってます。本当にありがとうございました。
 
矢田部PD:ありがとうございます。皆様、大きな拍手をお送りくださいませ。皆川暢二さん、磯崎義知さん、吉田芽吹さん、そして田中征爾監督でした。本当にどうもありがとうございました。

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