10/27(土)ユースTIFFティーンズ『いい意味で小悪魔』上映後、ジョアンナ・ブロアンさん(FIFEM 映画祭/CEO&アーティスティック・ディレクター)、マーティン・ポール=ハスさん(プロデューサー)をお迎えし、Q&A が行われました。
⇒作品詳細
田平美津夫プログラミング・アドバイザー(以下:田平PA):ジョアンナさんは、モントリオールのチルドレン・ユース・フィルムフェスティバルのディレクターなのですが、彼女の映画祭では、こちらの作品は15歳以上から観せているそうです。まずジョアンナさんに、ケベックではどのような形で観せているのかを聞いてみたいと思います。
ジョアンナ・ブロアンさん(FIFEM 映画祭/CEO&アーティスティック・ディレクター):今15歳とお話がありましたが、モントリオールの映画祭では、13歳以上が観られるとしていました。ある意味チャレンジではありますが、家族向けの映画だと思っていますので、15歳よりももう少し若い子供たちにもご覧いただくようにしていました。
Q.この映画を通じて何か観客に訴えたいことがあったのか、それとも観客に何かを考えてほしかったのか、お教えください。
マーティン・ポール=ハスさん(プロデューサー):そうですね、監督と脚本を務めた方からの明確なメッセージがあります。僕はプロデューサーとして男なのですが、今の世の中の男と女の関係でアンフェアな部分ってあると思うんですね。男の子の初体験の映画というのは比較的たくさんありまして、それはもう喜ばしいことのように描かれているんですけれども、それに対して女の子のそういう初体験の映画というのはとても少ないんです。だから、それがアンフェアだということをこの映画で伝えたいと思いました。この映画は、とってもライトな軽い映画に見えますけれども、そういう意味ではシリアスなメッセージのある映画です。
田平PA:ありがとうございました。
ジョアンナ・ブロアンさん:脚本と監督は女性なので、その点がとっても重要かと思います。
Q.どうしてモノクロームだったのでしょうか?
マーティン・ポール=ハスさん:監督のソフィー・ロレインさんの意向です。若い俳優さんたちが出ていて、セリフも多く、さらに舞台がおもちゃ屋ということで、これをカラーで撮ったらもう色が多くて気が散ってしまってセリフに集中できなくなると思ったんです。だから、セリフに集中していただくために、あえてモノクロにしました。
Q.公園で三人で、ペットボトルにドラッグみたいなの入れて吸ってるシーンがありました。日本だとああいうシーンはまず考えられなくて、ドラッグが中高生に一般的というのが日本の感覚だとあんまりないことかなと思います。そういう映画でも13歳から観せちゃっていいのでしょうか。
マーティン・ポール=ハスさん:舞台となっているカナダでは、実は10日前から、18歳以上はマリファナが合法になったんです。まあこの子たちは18歳になってないですけれども、編集をしているときに、子供たち、中高生の方々、そして親御さんたちにも観ていただきました。親御さんは知らないとしても、公園で子供たちがマリファナを吸っているというのは現実です。
Q.キャスティングについて、お聞かせください。若い俳優さんがたくさん出ていましたが、彼らは役柄の設定と同い年くらいなのでしょうか。それとも年上なんでしょうか。演技がとてもお上手でしたので、その点が気になりました。
マーティン・ポール=ハスさん:俳優さんは、大体役柄と皆さん同い年くらいです。よくアメリカの映画では、役柄よりも5歳6歳上ということはありますけれども、私たちは敢えて同い年くらいの役者を使うことにしました。その方がモノクロの映画でよりリアリティが出ると思ったのです。ただ、そのせいでキャスティングも難しかったです。シャルロット役の子も同い年くらいですので、テストのときにオーガズムのふりをするというのをやったのですが、やはりとても恥ずかしがってしまい、その時は男性の方は部屋から出てもらうことにするなどしました。この映画の俳優たちは、テレビ番組に出ていることはありますが、そんなに映画の経験はないので、撮影に時間がかかりました。
Q.なぜあのボリウッドの楽しげな音楽が採用されたのでしょうか。実際に流行っているからなのか、もっと他の意図があったからなのですか。
マーティン・ポール=ハスさん:自分の作った映画を批判するというのもなんなのですが。あの音楽はボリウッド映画の音楽であり、ビデオゲームの音楽なんですね。劇中マディア・カラスの歌が出てくるのですが、あの音楽は本当に素晴らしくて、男の人を悩ます歌ですけれども、素晴らしくはまったと思います。このボリウッドの音楽に関しては、もしかしたらもっと何かできたのではないかなと思うところではあるのですが、ただ、みんなの一体感や喜ばしい感じを出すためにあの音楽を使いました。
田平PA:かなり過激なシーンの多い作品だと思うのですけれど、この過激なシーンの多い作品を13歳から観せて、保護者からのクレームとか、子供たちが嫌になるとか、そういう問題は無いのでしょうか。
ジョアンナ・ブロアンさん:この映画を学校の13歳の生徒全員に観せようだとか、そういうことは思っていません。あくまでも、親御さんと一緒に観ていただいて、話し合っていただきたい、という目的でお観せしました。私も思い返せば、13歳くらいのときに、同じようなことをしていたと思うのですね。でも、親にはそれを全く話しませんでした。そのため、この映画祭では、親御さんと一緒に観てほしいという意図でお観せしました。映画祭で上映したのと、映画館で商業的に上映されるのが、同じくらいの時期だったのですけれども、そのおかげで、映画館に新しい観客層が観にくることになってくださって、よかったと思っています。
監督のソフィー・ロレインさんはカナダでは有名な女優さんですので、皆さんの興味もこの映画にかなり集まっていたのですね。この映画をより商業的にも盛り上げる、観客を集める助けになったのではないかと思っています。
マーティン・ポール=ハスさん:思ったほど、賛否両論で喧々諤々ということにはならなかったのではないかなと思います。子供たちのことを描いていますが、子供たちに話しかけている、問いかけている映画でもあるのです。お説教ではないですけれども、セックスは誰かを好きになってからするんだよ、という当然のことなのですが、そういうところを話しかけています。私も娘が三人いるのですが、子供のそういう行為のことはもちろんわかっています。
田平PA:この会場の中に高校生の方はいらっしゃいますか?もしよければ質問してみませんか。
Q.自分も今高校生で、部活動で映画を作成したり協力したりしているのですけれども、今観せてもらったようなメッセージ性のある映画を作る上でのアドバイスがあれば、教えていただけないでしょうか。
マーティン・ポール=ハスさん:自分の信念に基づいて映画を作ることだと思います。社会に何を問いたいか、何をメッセージとして伝えたいか、そういう確固たるものをもって映画を作られたらいいのではないかと思います。この映画は、僕がプロデュースしたときも最初に脚本の方とお話して、子供のためになるような映画を作りたいという話をしたら、話の中で、男女の違いを描き出せないかということになったのですね。恋だとかセックスだとかにおける男女の違いを書いたらどうかなと、脚本の方がおっしゃってくださって。じゃあそれでいこう、ということになりました。だから、自分の確固たる、信念や伝えたいことがあって、それを追求するといいのではないかなと思います。若い方が作られる映画は、時にメッセージがなかったり、どこに行きたいのか、ゴールが明確じゃない映画が意外と多いと思うのですね。だから、明確なゴールと伝えたいメッセージをもって作られたらいいと思います。
ジョアンナ・ブロアンさん:ターゲット層など、そういうものを考えるのは後で、どんな物語を伝えたいのかをはっきりと明確にして、お作りになればいいのではないかなと思います。
田平PA:このユース部門では、できるだけティーンズに、若者に挑戦的な作品をどんどん紹介していきたいと思います。皆さんありがとうございました。