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第31回東京国際映画祭のアウォード・セレモニーが11月2日、東京・六本木のEXシアターで行われ、フランスのミカエル・アース監督作『アマンダ(原題)』が最高賞の東京グランプリ、最優秀脚本賞 Presented by WOWOWを戴冠。セレモニー終了後、コンペティション部門の審査委員長を務めたブリランテ・メンドーサ(フィリピン/監督)をはじめ、審査員のブライアン・バーク(米/プロデューサー)、タラネ・アリドゥスティ(イラン/女優)、スタンリー・クワン(香港/監督・プロデューサー)、南果歩(女優)が会見した。
コンペティション部門全16作品の審査を終えたメンドーサ委員長は「まずは審査員の皆さんに心からお礼を申し上げます。お疲れ様でした。ともに素晴らしい時間を過ごせました。今回の結果に対して非常に満足しています。(受賞作を)決めるなかで特にもめることもなかった」と充実感をにじませた。一方、クワン監督は「ここにいる5人が作品を選定するなかで、共通の認識を持てていたことをとても嬉しく思います」と振り返っていた。
国際映画祭の審査員を初めて経験した南は「素晴らしいフィルムメーカーと同じ時間を共有でき、1つの映画について愛情を持ちながら語り合えたということは、私の今後のキャリアにおいても大きなポイントになった」と心境を吐露。「映画は人の手によって作るものですが、人の目や感性によって、賞を選ぶ難しさを実感しました。でも、結局は“人の心に訴えかけるものが映画である”ということを、いち審査員、いち観客、現場に身を置くいち俳優として感じました。この映画祭を通じて、早く映画の現場に身を置きたいなという気持ちが募っています」と語っていた。
選考の過程を問われたメンドーサ委員長は「毎日およそ3本鑑賞するスケジュール。議論は形式的に話すのではなく、作品を見た後に「何が良かったのか」という点を話し合い、16本を鑑賞し終えた段階で、一番優れていると思うものを、5、6本選びました」と説明。『アマンダ(原題)』の東京グランプリ受賞の決め手については、バーク氏が「演技、脚本、演出のどれもが素晴らしかった。特に細部の描写が力強い作品で、全ての要素が上手くまとまっていました。ラストの結末には感動させられましたし、全員一致で最高の作品だという結論に至りました」と補足していた。
ヨーロッパ作品が主要賞を席巻したという事実について、アリドゥスティは「そのことに関する会話はもちろんありました。ここはアジアですし、たくさんのアジアの作品が出品されている。ですが、私たちが約束したのは、どこの国の作品を鑑賞するのか、どこの国の映画祭に参加しているのか、その全てを忘れて純粋に映画を見るということ」と作品のシノプシス、メガホンをとった監督の性別といった情報を排して“まっさらな状態”で選定に臨んだことを告白。「私たちとは異なる5名の方が審査員を務めていたら、全く別の結果になっていたかもしれません。ですが、今回は私たちの意見が一致し、このような結果となりました」と誰からも異論のないアンサーとなったようだ。
会見には、日本映画スプラッシュ部門『鈴木家の嘘』(作品賞)の野尻克己監督、『銃』(監督賞)の武正晴監督、『メランコリック』(監督賞)の田中征爾監督、アジアの未来部門『はじめての別れ』(作品賞)のリナ・ワン監督、『武術の孤児』(国際交流基金アジアセンター特別賞)のホアン・ホアン監督、コンペティション部門『半世界』(観客賞)の阪本順治監督、『ホワイト・クロウ(原題)』(最優秀芸術貢献賞)のプロデューサーであるガブリエル・タナ、『堕ちた希望』(最優秀監督賞&最優秀女優賞)のエドアルド・デ・アンジェリス監督、『氷の季節』(審査員特別賞&最優秀男優賞)のマイケル・ノアー監督、プロデューサーのマティルダ・アッペリンとルネ・エズラも出席した。
第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。