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山戸結希監督が企画・プロデュースするオムニバス映画『21世紀の女の子』が11月1日、第31回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門で特別上映され、山戸監督とキャストの橋本愛が上映前の舞台挨拶に登壇した。
1980年代後半~90年代に生まれた15人の新鋭監督が集結した今作。すべての監督が“あるひとつのテーマ”を共有する8分以内の短編を手がけ、1本のオムニバス作品を紡いでいく。唐田えりかとタッグを組み『離ればなれの花々へ』のメガホンをとった山戸監督は、「この世界には未来を変える映画はいくつあるでしょうか? 死ぬまでに、そんな映画をいくつ作れるでしょうか?」と口火を切ったが、突然言葉を紡げなくなってしまった。長い沈黙の後「(言いたいことは)200行くらいあったんですが、2行でセリフが…。当日セリフを仕込まれる役者さんの気持ちが痛いほどわかりました(笑)」と話し、神妙な面持ちで発言を待つ客席を和ませた。
気を取り直して「皆さんは『21世紀の女の子』はどんな映画だと思っていますか? この世界をどのように変えうるのでしょうか」と問いかけた山戸監督は、本作の存在によって「私たちの生きる東京で、映画を作る女の子が突然変異的に増えていく」と予言。小説、音楽、漫画を集約でき、“複製芸術”の一面を持つ映画は「田舎に暮らす女の子にも、遠くにも、遠くにも、最上の芸術が届く可能性を秘めています」と説明し、「その映画という芸術表現に全てを懸けてみたい」と思いの丈を述べた。
やがて「私たちの暗闇に『21世紀の女の子』が灯った時、皆さんと共有する言葉にならない思いが、10年後には“文化”になって、100年後には“伝説”、そして1000年後には“神話”になると思います」と語った山戸監督に、会場から大きな拍手が鳴り響いた。松本花奈監督作「愛はどこにも消えない」に主演した橋本は「今日は皆さんと同じように、山戸監督の言葉を聞きに来ました」と打ち明けつつ「私はこの映画を見て、言葉にならない涙が出ました。今もそれを説明することは不可能です」と心境を吐露した。
そして「監督の皆さんの“見えない言葉”を、私たちがなんとか体現しようとした時間が封じ込められてると思います」と感慨深げに話した橋本。「私も映画の力を信じています。この映画が、これから世界が変わっていく序章の方に存在すること、それを見届けた目撃者の皆さんが宝物のようなものを持ち帰っていただければいいなと、今は願うばかりです」と期待を込めていた。
『21世紀の女の子』は、2019年2月8日から東京・テアトル新宿、ヒューマントラスト渋谷ほか全国順次公開。第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。