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2018.11.01 [イベントレポート]
高畑勲監督はアニメーションの開拓者 “盟友”小田部羊一&吉村次郎、切磋琢磨の日々を語る
映画コムニュース
©2018 TIFF
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故高畑勲監督を特集する「高畑勲監督特別上映会」が10月31日、第31回東京国際映画祭で開催され、長編アニメ初監督作『太陽の王子 ホルスの大冒険』がTOHOシネマズ六本木ヒルズで上映された。上映後のトークショーには、東映動画(現・東映アニメーション)時代の高畑監督を知る小田部羊一(アニメーター/キャラクターデザイナー)、吉村次郎(撮影)が出席。清水慎治氏(東映アニメーション常務取締役)の司会進行のもと、アニメーション製作に没頭した若き日々を振り返った。

1968年公開の本作は、当時の東映動画の精鋭スタッフが結集しており、高畑監督をはじめ、場面設計・美術設計・原画を宮崎駿、作画監督を大塚康生が担当。原画スタッフとして参加した小田部は、「50年ぶりなんですよね」と噛み締め、「もう少し古ぼけて見えるのかなと思ったのですが、意外や意外。やはり高畑監督の力を感じました」と感慨深げに語った。

一方、本作の撮影を担当した吉村は「50年も経つと一緒に仕事をした人たちが随分いなくなるんだな。パクさんはもちろんですが」とこぼし、「『太陽の王子』の撮影部の年齢は全員20代で、私が一番年寄りでした。ですので、やりたいことができなかった。失敗とは言わないが、「もっとできた」「もっとやりたかったな」という思いが画面のなかにたくさん出てきてね。悔しいような感じも少し覚えました」と率直な思いを明かした。

さらに小田部は、本作の製作当時を「この作品で、高畑監督は民主的な作り方をしてくれた。スタッフが作品の意図を把握して、みんなを集めてストーリー段階から話し合いをしたり、意見を出せるようにしてくれた」と述懐する。その一方で、個人の才能も生かし「画面全体をとらえて絵を描く奴が出てきた。それが宮崎駿なんです。監督は「画面構成は宮崎に任せる」としました」。そのうえで、「特定の人だけじゃなく、全員がやる気を出した。みんなが「自分の作品だ」といえる作品になった」と誇らしげに語った。

イベント終盤、清水氏は「今日、高畑さんの奥さんがみえています」と明かし、「奥さんの前ですから悪いことは言えないと思いますので(笑)、高畑勲さんへのお気持ちを話していただけますか」と2人に問いかけた。小田部は「(東映動画に)同期入社ですが、高畑氏は1歳年上です。なんでも知っているというくらい勉強熱心で、とことん相談に乗ってくれた。例えば「動きのなかで演技をする・セリフをしゃべる」ことについて。彼は、一生懸命に説明してくれた。アニメーションに命を吹き込もうという気持ちがあったんです」と述べ、高畑監督のアニメーションへの情熱を称えた。

吉村も「アニメーションという概念に対する開拓者・先駆者」と称賛し、「漫画映画は子どもたちの娯楽という概念でしたが、50年代の後半に劇画が流行って中高生向けの文化が台頭してきた結果、「ターゲットを引き上げよう」となり、(高畑監督が)新しい分野を開拓した。それまでのおとぎ話や教訓を面白おかしく語るみたいなところから、ちゃんとしたストーリーやテーマがあって、シリアスに語るものを開拓したんだと思います。その後70年代に、次々出てきた青少年向けの作品の先駆者だった」と熱弁をふるった。

 第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。
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