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第31回東京国際映画祭が開催中の東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで10月31日、コンペティション部門に選出された『ブラ物語』が公式上映された。上映後には、脚本とプロデュースも手がけたファイト・ヘルマー監督をはじめ、出演するパス・ベガ、ドニ・ラバン、フランキー・ウォラック、サヨラ・サファーロワ、ボリアナ・マノイロワ、イルメナ・チチコバが登壇し、観客とのQ&Aに応じた。
定年退職を控える鉄道運転士のヌルラン(ミキ・マノイロヴィッチ)が、物干しロープから外れ、列車に引っかかった青いブラの持ち主を探し出そうと奔走する。長編デビュー作品『ツバル』以来、架空の地を舞台にしたヒューマンドラマを描き続けるヘルマー監督が、全編ほぼセリフを排した幻想的な“大人の寓話”を完成させた。
当初、アゼルバイジャン共和国の首都バクーを中心に撮影された本作だが、ヘルマー監督は「警察に何度も撮影を止められた」と告白。現在、バクーでは急速な再開発が進んでいるといい「政府が風情のある街並みを撮らせたくなかったんだ」と理由も明かし、「結局、撮影の途中で僕らが隣国のジョージアに移動した」と苦労を語った。
さらに「撮影中にプロデューサーが、数人のスタッフとともに機材を持って逃げ出したんだ」とまさかの事態にも遭遇。「映画が完成し、こうして東京で上映されるなんて信じられない。実際、舞台裏を追ったドキュメンタリーは、映画に負けず劣らずドラマチックだよ」と安どの表情を浮かべ、同席したキャスト陣には感謝を示した。
ブラの持ち主候補の一人を演じたベガも「映画の完成は奇跡に近い」。セリフのない脚本に「恋をした」といい、「愛の必要性を美しく、そしてキュートに描いている」と話した。また、『ツバル』にも出演しているラバンは、「2つの作品には、共通点があると思う。優しさ、愛、慎み深さだ。それにどちらの作品にも、ブラジャーが登場するんだよ」と笑いを交えて、ヘルマー監督の詩的な語り口を分析していた。
第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。