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2018.10.31 [イベントレポート]
メキシコで濃密な人間ドラマ描く新鋭監督「小津さんの道をたどっていきたい」
映画コムニュース
©2018 TIFF
映画.com

第31回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されたメキシコ映画『ヒストリー・レッスン』が10月31日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、マルセリーノ ・イスラス・エルナンデス監督、女優のベロニカ・ランガー、プロデューサーのアンドレア・トカ、ダニエラ・レイバ・ベセラ・アコスタが会見した。

ベテラン女性教師ヴェロは、反抗的な転校生エヴァの態度にうろたえるが、次第にエヴァはヴェロの生活に侵入し、やがてふたりの間に奇妙な友情が芽生えて行く。世代を越えた交流を描く人間ドラマ。

長編3作目となるエルナンデス監督は、今作のテーマを「私が仕事をするときは心から行います。個人的な経験を描くことはつらい経験ですが、今回は、自分や愛する人たちに対してのラブレターにしようと考えました。愛を生きる原動力にしたかったのです」と語る。

日本で公開されるメキシコ映画は、麻薬や暴力を描いた作品が多いが、エルナンデス監督は人生を描く人間ドラマを作り続けて行きたいと語る。「私は小津安二郎監督の大ファンです。外国で小津監督は、日本人らしくない監督として知られており、人生そのものを伝えようとしています。私は小津さんの道をたどって行きたい、そう思って映画で人生を語っています」と明かす。そして、「私は女性の物語を書くのが好きなのです。幼いころ父親が去って行ったので、女性に囲まれて育ちましたし、女性が強くなれるということを知っています。ヴェロの強さを描いたのです」と説明した。

がんを患い、人生の終着地が見えてきた女性という難役を演じたランガーは、「最初からヴェロの役柄に魅力を感じてました。彼女の軌跡、生と死の矛盾が描かれています。誰でも最後に死ぬものですが、それを受け入れるのは難しい。ヴェロは死が差し迫っていることを理解し、最後の日々を大事するのです。ヴェロの人生は刺激がなく、出来上がったものでしたが、最後に恋心のようなものを感じたり、一生懸命濃密に生きることを描きたかったのです」と役柄への思いを述べた。

プロデューサーのアコスタは、ヴェロを新しい世界へ導く生徒役のエヴァを演じたレナータ・バカを、メキシコで人気のユーチューバーであると紹介。「彼女の出演第1作ですが、今回、監督が時間をかけて彼女の役を仕上げたと思います。また、ベロニカとのケミストリーが素晴らしいものでした」と振り返った。

第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。
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