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2018.10.30 [イベントレポート]
第2の『カメ止め』? 週末監督が300万円で描いた青春ドラマ
映画コムニュース
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第31回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門に出品された『メランコリック』が10月30日、東京・六本木のTOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、田中征爾監督、出演・プロデューサーの皆川暢二、磯崎義知、吉田芽吹がティーチインに出席した。

大学を卒業後、うだつの上がらぬ生活を送っていた主人公・和彦(皆川)が、ふとしたことから銭湯に勤務。ところが閉店後の深夜、風呂場を「人を殺す場所」として貸し出していることを知り、やがて同僚の松本(磯崎)は殺し屋だったことが明らかになるというストーリー。脚本・監督は本作が初長編作品となる田中氏。同い年の3人組、田中氏、皆川、磯崎が立ち上げたユニット「One Goose」で製作した。

普段はIT系会社に勤務している田中監督は「皆川君は俳優、磯崎君は18歳の時からの親友。皆川君から「仕事を待つだけの人生はいやだ。脚本・監督をやってくれ」と言われ、金も出してくれた。東京国際映画祭では唯一、ただのピュアな自主映画です」と紹介。内容については「僕自身、福岡の進学校に行っていた。友達は弁護士や会計士になったが、自分は(IT会社で働く)映像屋で、劣等感を持ったことがあったので、主人公に背負わせた」と明かす。

会社勤めがあるため、今冬、金曜の夜から日曜日にかけて、計10日間かけて撮影。現場はかなり過酷だったようで「僕とカメラマンはほぼ立ちっぱなしで休憩なし。撮影が終わった日は朝っぱらからステーキが食べたくなった」と振り返った。「編集は応募の締切日の朝に終わった。書き出しに22時間かかることが分かったが、会社に行かなくきゃいけなかった。無理やり映像を圧縮して、記念のつもりで応募したら、映画祭から連絡が来た」と話した。

プロデューサーでもある皆川は「すべてが初めてだったので、合間合間に連絡したり、きつかったけれども、いい緊張感の中でできた。製作費は300万円ほど。作ってからも、映画祭に出したり、お金がかかった」。ロケ地は千葉・浦安にある銭湯「松の湯」。「磯崎君の家の近くにいい感じの銭湯があると聞き、直接交渉しました。映画の内容も伝えましたが、オーナーの方がものすごくいい人で、フルに使わせてもらえた。聞いたら、『ケンとカズ』でも使われたことがあった」と話した。

金髪の殺し屋を演じ、派手なアクションを見せる磯崎は「(撮影は)もともと友達なので、パーティーにでも行く感じで、終わった後は寂しかったですね。子供の頃から格闘技をやっていた。俳優になってからは特別なアクションを習いました」と話した。最後に、田中監督は「自主映画なので、配給会社は決まっていません。この映画祭の評価次第で、今後の展開が決まっていくので、絶賛して欲しい」とアピールしていた。製作費は今や、社会現象にもなった『カメラを止めるな!』と同じ300万円。純粋な中身勝負で選出された若き才能は、東京国際映画祭からムーブメントを起こせるか。第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。
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