Close
2018.10.29 [イベントレポート]
「過去の二作品よりも神聖なものに仕上げたかった」10/26(金):Q&A『ザ・リバー』

ザ・リバー

©2018 TIFF
オープニングイベント・レッドカーペットに登壇したエミール・バイガジン監督

 
10/26(金)、コンペティション出品作品 『ザ・リバー』の上映後、エミール・バイガジン監督をお迎えしQ&Aが開催されました。
⇒作品詳細
 
エミール・バイガジン監督(以下、監督):日本を訪れるのは今回が初めてで、カザフタンの友人から日本はどうかと聞かれましたが、どこも本当に素晴らしく、美しい街だと思いました。東京に到着したのが昨日のことで、ちょっと疲れていますが、東京という街を正しくしっかりと理解するために、ちょっと力を貯める必要があるかな、と友人たちには報告したところです。
 
矢田部PD:ありがとうございます。今回の作品で、青年を主役にしているということで、(以前の作品から続いて)三部作という呼び方をされていることもありますけれども、今回のこの僻地、少年たち、川、というような設定を思い付かれたいきさつを教えていただけますか?
 
監督:ご質問をありがとうございます。私はこの三部作となる作品を通じて、何がしかの変革、革命のようなものを起こしたいと思っていました。最初の二部作では、殺人というテーマがありましたが、今回最終作となる、この『ザ・リバー』に関しては、殺人のない作品として、そして過去の二作品よりも神聖なものに仕上げたかったんです。どのようなところから着想を得たのか、インスピレーションを得たのか、というご質問だったと思いますが、教会でのステンドグラス映像が美しいと思って、そこからインスピレーション、原案を得た、という形になっています。
 
矢田部PD:ステンドグラスの映像からこの砂漠での構図などがとても特徴的で目を引かれてるんですけれども、その着想の源にはステンドグラスの絵画があった、ということですね。
 
監督:教会のステンドグラスということで、キリスト教をイメージされることもあるかとは思うんですが、共通点はあるかと思います。私が今回作りました『ザ・リバー』との共通点はあるかと思いますが、そのことに忠実に基づいている、というわけではありません。
キリスト教というより聖書と若干関係があるかと思います。今回の作品の中で、精神的な状態を何らかの形で解放したい、そういった形での奇跡というものを起こしたかった、という想いもあります。
 
Q:主演の子供たちは役者さんなんでしょうか?それとも現地の方々でしょうか?
 
監督:私が見つけたといいますか、私のアシスタント、キャスティングの助手をしている者が見つけました。身体的能力に関してなんですけれども、3か月間、水泳の教室に通いました。そのようなシーンが印象に残って、質問をいただき、非常に嬉しく思います。なぜならば、確かにあの川の流れは非常に急ですので、そこで演じる少年たちの安全を確保するためにそれなりの費用を投じる必要があったんですね。撮影そのものがとても大変だったんです。
 
矢田部PD:5人の主人公の少年たちが並ぶ画などで身長から細かく計算してキャスティングされたのではないかと思いますが、どこまでこだわられましたでしょうか?
 
監督:5人の例えば身体的な特徴、身長を特に強調したわけではないんですが、5人一緒の画を撮ったときにどういう風に映るのか、どういう風な画像になるのか、というところは重視しました。ですが、その見た目、外見上の特徴よりも、心理的な要素、そちらの方を重視して選びました。
私自身がキャスティング、あれぐらいの年齢層、いわゆる少年ぐらいの年代の俳優さんを選ぶときに、どういうところに注意を置くかというと、彼らがどういう風に嘘をつき、どう他人(ひと)を騙すか、そのやり方に注意を払っています。オーディションのときに最初に質問する内容がそれですね。オーディションの時の公式の質問ではなくて、初めてその少年たちと顔を合わせた時は、そのような質問をしています。
 
Q:監督がキャラクターに託した意味などを知りたいと思いました。
 
監督:ありがとうございます。彼らは私にとっては何者か、どういう人間かというよりも、どういうものなのかという存在です。家庭の中に備わっているような、既にあった秩序を破壊するような人物ではなくて、兄弟同士の絆、その関係を確かめるような存在でもあったわけです。ただ、いただいたご質問に対しては、直接お答えするよりもこの映画を観てくださった観客の皆様に、それぞれの解釈をお任せしたいと思います。ご回答するとすれば、かなり詩的な表現になってしまいますが、その家の中に流れ込む風、作品の中に該当シーンがあったと思いますが、それを回答とできればと思います。その風というものは何なのかと考えた時に、風は確かに秩序を乱すもの、カオスを生み出すものですけども、それと同時に空気を正常で新鮮にしてくれるものでもあります。
 
Q:演技指導はしましたか?
 
監督:兄弟たちはあんなに会話、口数が少ないのか、というところから一緒に考えていきましょう。リゴリズム(厳格主義)というものがあるんですけれども、そこでシンボル、象徴、そういったものレンズを通して伝えたいというのがありました。そこから精神的な内容、そこを表したいということに重きを置いたがために、口数が少なくなっていきました。リゴリズムというのは、厳しさとか堅さとかを表す理念になります。このような概念、考え方というのは私自身の活動の中で影響を与えてきたものです。
 
Q:映画を理解する上で、カザフスタンの情勢をお伺いできればと思います。
 
監督:まず私が映画作品を作るにあたって、対象としているのはカザフスタンの国民だけではありません。カザフスタンだけで鑑賞してもらうのだけを目的として映画を作っているわけではありません。現在のカザフスタンの情勢について申し上げることができるとすれば、確かにかつての共産主義的なものは若干残っていることはあるかもしれないですけども、今の大部分は資本主義的なものとなっております。
 
矢田部PD:ありがとうございます。時間が来てしまいました。
 
監督:みなさん来ていただいて、どうもありがとうございます。

オフィシャルパートナー