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2018.10.29 [イベントレポート]
香港の鬼才フルーツ・チャン、女性の性欲描く『三人の女』は「中国本土では上映できない」
映画コムニュース
映画.com

第31回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品された香港のフルーツ・チャン監督による『三人の夫』が10月28日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、来日したチャン監督、女優のクロエ・マーヤン、脚本のラム・キートーが会見した。

半人半魚伝説が残る香港の港でボートで暮らし客を取る娼婦が主人公。人間離れした性欲を持つ女は3人の夫を持ち、男たちに搾取され続けてもひたすら行為を続ける。香港の鬼才が、美しい映像表現とセックスを通じて時代を風刺する問題作。

『ドリアン ドリアン』(00)、『ハリウッド☆ホンコン』(01)に続く娼婦3部作の最終章。チャン監督は「女性のセックスを中心にした映画を撮ることは、中国においてある意味冒険でタブーでもある」といい、過激な性的描写を含んだ今作の劇場公開は「香港では問題ありませんが、中国本土では上映できないと思っています。これが社会の暗黒面だと思っています。まったくカットを入れていないので香港でも成人映画指定です」とのこと。物語の設定については「本来、性的欲望は男性のものだと思っていました。性欲の強い女性を描いたのは初めてなので、自分でも良く分からず苦労しました。医者からは、女性の欲望も満足がいくまで止まらないという話を聞きました」と明かした。

本作が初主演作となったマーヤンは、肉感的なヒロインになって欲しいという監督の要望で1カ月で13キロ以上体重を増やし、撮影に挑んだ。中国ではタブー視される作品への出演は「私の中では簡単な決断でした。自分との対話、過去や未来の自分を考える中で、今一番やるべきだと感じられました。私の成長の中で、パワフルで特別な作品だと思ったのです」と述懐。記者から、ヌードや性描写を映した他の作品で、撮影後に監督と女優との間でトラブルが起こった事例についての考えを問われると、「自分から一度海に潜りこんでいったので、私は自然の流れに任せるのが一番だと思いますし、今この場にも穏やかな気持ちでいられます」とにこやかに答えた。

脚本を担当したキートーは「このシリーズは、まずチャン監督が文字脚本を起こします。そして、私がビジュアルを加えた上での脚本を書くのです。ある意味、実験的なやり方です」と独特の手法があることを明かし、「あて書きで、俳優ありきで書き起こした作品です。彼女のお芝居を見て、完璧に伝えてくれたと思いました。この映画が成功したのは監督と演者の力だと思います」と作品の出来に自信を見せた。

第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。
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