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2018.10.29 [イベントレポート]
ピート・テオ『タレンタイム』のアフマド監督の思い出を語る
映画コムニュース
©2018 TIFF
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第31回東京国際映画祭の企画「国際交流基金アジアセンター presents CROSSCUT ASIA #05 ラララ 東南アジア」で、マレーシア出身のマルチクリエーター、ピート・テオの特集上映が10月28日、東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで行われ、テオがQ&Aに出席した。

マレーシアを代表するヤスミン・アフマド監督の最後の長編映画『タレンタイム 優しい歌』(2009)の音楽で知られるテオ。ハリウッド版『攻殻機動隊』の『ゴースト・イン・ザ・シェル』にも出演、プロデューサー、監督もこなすマルチクリエイターだ。そんな活動歴からテオが関わった短編や80分のオムニバス映画を一挙に上映した。

本映画祭の参加は『タレンタイム』が上映された第22回(09)以来。同年7月にアフマド監督が急逝し、ティーチインに立ったテオは、映画の挿入歌「I Go」を歌おうとしたものの、悲しみのあまり最後まで歌い切ることができなかった。

「マレーシアでも1回歌おうとしたことがありますが、最後まで歌い切ることができなかった。この曲はヤスミンがとても気に入ってくれた。韓国でリリースするために作り、マレーシアでは告知しなかったんです。でも、ヤスミンはインターネットで探して知って、朝3時に電話して、「なんで私に言ってくれないの? 次の作品に使っていいかな」「いいよ」って言って電話を切ったんですが、結局、『タレンタイム』の音楽を全部手がけることになりました」と振り返った。

アフマド監督からは「どんな気持ちで書いたの?」と聞かれたという。「特定の理由がない場合が多いけれども、今となっては彼女のために書いたのかもしれない。「言葉が音をなくして、兵士が墓に眠りにつくよう」にというフレーズに興味を持っていました。自分の歌については説明しないことにしていますが、そのルールを破って、お話しますと、“どこか行くこと”をモチーフにして、歌いたかったんです。誰かが去っていく、誰かが残される。そのどちらの状況なのかは、自分でもはっきり決めていなかった」と話した。

アフマド監督との思い出になると、言葉が止まらない。「長年友人だったけども、実際に会うのは少なかった。彼女も出張、僕はツアーで忙しかったので、メールでつながっていた友情でした。『Here in My Home』のミュージックビデオも一緒に作った。ともに闘う同志という意識でした。結局、『チョコレート』が遺作になってしまった」と話した。

観客からはソングライティングのプロセスについての質問も。「自転車にどうして乗れるかを説明するくらい難しい。例えば、「I Go」は5分で書き上げました。僕にとって、詩とメロディは切り離せないものです。「どうやって、浮かんだの?」と聞かれますが、飛んできたものを掴むような感じです。作ったものの初稿は捨てるようにしています、いいものだったら、1週間経っても覚えているし、忘れたら、いいものではなかったということ」と説明していた。

第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。
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