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アポなし突撃取材で知られるドキュメンタリー監督マイケル・ムーアの最新作『華氏119』が10月28日、第31回東京国際映画祭の特別招待作品として上映され、「トランプ大統領はどんな人?」(幻冬舎)などの著者・中林美恵子氏(早稲田大学教授)、著述家・ディレクターの湯山玲子氏がトークショーに出席した。
『ボウリング・フォー・コロンバイン』『華氏911』などのムーア監督が、アメリカ合衆国第45代大統領ドナルド・トランプを“悪の天才”と称しながら徹底批判し、彼を当選させたアメリカ社会にもメスを入れていく。中林氏は日本人で初めてアメリカ合衆国連邦議会に正規採用された経歴を持ち、長年「トランプもマイケル・ムーアも大嫌い」という同僚が多数の“保守的なメインストリーム側”で働いていたため、「ムーア監督は天敵のようで、なるべく見ないようにしてきた」と苦笑する。
それでも、今作については「本当に面白かった」と楽しんだ様子。その理由を「ムーア監督が、エッセイのように思いを伝える映画になっている」とし、「一番面白かったのは、オバマ前大統領のことも非難しているところ。ある意味、アメリカでは右側と左側で同じことが起こっているという、非常に深い示唆がある。今後の世界・アメリカ政治を占う意味で、とても参考になる映画」と高く評価した。コメンテーターとして各メディアで意見発信する湯山氏も、「アメリカという国を知るための、重要なテクストとして楽しませてもらいました」と述べた。
さらに映画では、“ミレニアル世代(1980~90年代に生まれた若い世代)”が希望だと示唆されおり、中林氏は同意しつつも「問題は、彼らはあまり投票所に行かないこと」と付け加える。「(アメリカで)ついこの間とられた「選挙に必ず行くか?」というアンケートでは、65歳以上の方は82%が「絶対に行く」と。しかし20代になると、「行く」というのは20数%になるんです」とデータを参照し、「それではいくら意見があっても、選挙結果にはインパクトを与えない。だからこそ、ムーアさんは応援している。テイラー・スウィフトさんも選挙参加を呼びかけているし、彼女もそれを危惧していると思う」とアメリカの政治状況を俯瞰していた。
また、トランプ政権や与党の評価を問う中間選挙の投開票が、11月6日に迫っている。湯山氏が「史上最注目の中間選挙になる」と語ると、中林氏は「アメリカの“538”というサイト――2012年にすべての選挙区で誰が勝つか当てたサイトですが――では、80%以上の確率で下院は民主党、80%以上の確率で上院は共和党(が勝つ)」と本国の予想を引き合いにし、「片方でも民主党にとられると、アメリカは議会が非常に強いですから、トランプ大統領は政権運営でかなりイライラする状況がやってくる」と指摘していた。
第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。なお『華氏119』は、11月2日からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開される。