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2018.10.28 [イベントレポート]
オカルト、ゾンビで人間の恐怖を描く女性監督「ブラジルは神秘主義やシンクロニシティの観念が強い国」
映画コムニュース
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第31回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されたブラジル映画『翳りゆく父』が10月28日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、来日したガブリエラ・アマラウ・アウメイダ監督、プロデューサーのロドリゴ・サルティ・ウェルトヘインが会見した。

母を亡くし、不思議な力で願い事を叶えることのできる少女が主人公。同居していた叔母も黒魔術を信じ、少女は叔母とボーイフレンドとの仲を復活させる。一方でリストラに怯える父は、次第に様子がおかしくなっていく。オカルト、スピリチュアル、ゾンビなどホラー要素を盛り込んで描いた家族のドラマ。

アウメイダ監督は「私は人々に共通するものは、死への恐怖だと考えています。恐怖は表面的なホラーでも描けるし、ホラーを内包するドラマも描ける。友愛も人をつなげますが、私は恐怖がモチベーション。とりわけこのジャンルが好きなのです」と自身の作風を紹介する。

今作は主人公の少女の願望とも解釈できる、虚構と現実がない交ぜになった物語だ。「私は、自分なりの現実を人それぞれが作っていると考えます。この映画に出てくるキャラクターは自分自身の信じるものをつむいでいます。ブラジルは神秘主義やシンクロニシティの観念が強い国。いろんな宗教、宗派を信じる人がいるので、唯物主義だけではない。それを体現しているのが、この映画の中の何かを信じる女たちです。見る人が神秘性があるもの、また、父親の生きる世界の唯物、現実のドラマ、どちらに共感するかだと思います」と語る。

また、主人公の少女が、昔のクラシカルなホラー映画を見ている場面について問われると「映画に登場するクリップは、スティーブン・キング原作の『ペット・セメタリー』とジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生』です。90年代ブラジルではテレビで放送されていて、私も幼少期に見ていました。私の映画のストーリーラインに内包するものが、これら作品と通底するものがあると感じたので選びました。主人公の境遇を反映していると思ったのです」と説明した。

最後に、在日ブラジル人記者から明日決選投票を控える大統領選について問われると、プロデューサーのウェルトヘイは「ブラジルがなぜ面白い国なのかは多様性、そこからくる力強さがあるのです。マイノリティを排除する極右候補が勝てばそういったものが損なわれるのではと懸念しています」と、アウメイダ監督と共に母国の行方を案じていた。

第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。
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