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第31回東京国際映画祭が11月2日、東京・EXシアター六本木でアウォード・セレモニーが行った。輝きを放った若手キャストを選出する「東京ジェムストーン賞」が発表され、『銃』の村上虹郎、『鈴木家の嘘』『菊とギロチン』の木竜麻生、『ソン・ランの響き』のリエン・ビン・ファット、『蛍はいなくなった』のカレル・トレンブレイの4人に贈られた。また日本のインディペンデント映画の海外への飛躍をテーマに審査される「日本映画スプラッシュ」部門では、作品賞を野尻克己監督作『鈴木家の嘘』、監督賞を『銃』の武正晴監督、『メランコリック』の田中征爾監督が受賞した。
銃を手にしたことで狂気にとりつかれていく青年を熱演した村上は、トロフィーを眩しそうに見つめながら「こんなにキラキラして重みのある賞を頂いて……」と感嘆の声をもらし、「このジェムストーン賞の重みを自分に課していきたいと思います」と、決意を新たにした。また、村上は深田晃司監督作『さようなら』で参加した2015年の同映画祭で、本作の企画、製作を務めた奥山和由氏と出会ったことを明かし、「この映画祭との縁を感じています」と述懐した。
東京国際映画祭は初参加となる木竜は、兄の死という事実を母親から隠し嘘をつく少女を演じた『鈴木家の嘘』、女力士役に挑戦した『菊とギロチン』の2作品での演技が評価されて受賞。木竜は「このような賞を頂き、本当にありがとうございます」と感謝を述べ、「私が関わった2作品を上映して頂きました。作品に携わった皆さんと頂けた賞だと思っております」と語る。最後に「これからも努力を惜しまずに、精進して参ります」と、更なる飛躍を誓った。
ベトナム南部の伝統歌舞劇のステージと男の友情をつづった映画初出演作『ソン・ランの響き』での受賞となったファットは、「この名門の東京国際映画祭のコンペティションに出られたこと、この賞を受賞したこと、大変喜んでおり、光栄に思っております」と笑顔を浮かべる。「蛍はいなくなった」で、目標もなく無為に日々をやり過ごす少女を演じたトレンブレイは、「賞を受賞することが初めてで、審査員の皆様に選んで頂けたことを非常に嬉しく思っております」と、喜びを表明した。
日本映画スプラッシュ部門では、ベテランと若手が今年から新設された監督賞を分け合った。武監督は「先ほど虹郎さんも言ったように、私が3年前に『百円の恋』という作品で東京国際映画祭に来た時に、プロデューサーの奥山さんと久し振りにお会いしまして。まさか一緒に作品を作って、ここに戻ってこられるとは思っていなかったので感激しております」としみじみ。さらに「この映画を今日からいろんな国で見て頂けるように、精進していきたいと思います」と、力強く決意を語った。
そして作品賞に選ばれた『鈴木家の嘘』は、喜劇と悲劇の見事なバランスで複雑なテーマを描き切った点で高評価を獲得。野尻監督は、「監督はなるものじゃなくて、周囲にならせてもらうもの」という先輩監督の言葉を紹介し、「僕を監督にして下さったキャスト、スタッフ皆さんの賞だと思っています」と、感無量の面持ちで心情を吐露した。