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第31回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門の特別上映作品『21世紀の女の子』が11月1日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズでワールドプレミア上映され、企画・プロデュースの山戸結希監督をはじめ総勢14人の監督陣がQ&Aに臨んだ。
本作はすべての監督が“自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーが揺らいだ瞬間”を共通テーマとして8分以内の短編を手がけ、1本のオムニバス作品として構築されたもの。助監督時代の先輩から提案された原案を基に『恋愛乾燥剤』を完成させた枝優花監督は、山戸監督から与えられたテーマに悩んだようだが「お仕事で10代の子と一緒になる機会が多くて、その時に相談されたのが“人を好きになれない”ということ。小中学生の頃は“人を好きになる”ことを楽しみにできていたのに、大人になると相手の真ん中が見えなくなる瞬間が多くなった。もっと本能的に人を好きになれればいいのになという思いを込めました」と作品の方向性を定めた。
瀧内公美と朝倉あきが共演する『Mirror』を手がけた竹内里紗監督は「山戸監督と最初にお会いした時「女性監督ばかりを集めます」と言われたんですが、「また女性監督って言われる」と感じて怖かったんです」と述懐。山戸監督へその思いを正直に伝えたところ「皆女性であれば“女性らしい感性”と言われることはない。作品それぞれに対しての話ができる映画になる」と返答され「確かにそうだなと思ったんです。自分が女性監督と言われることに違和感を持っていたので、その話をできたことが、私にとっては大切な時間でした。なので、外側から求められるイメージと、本当の自分の間で悩む人を映画にしてみようかなと思ったんです」と着想の源を告白した。
石橋静河を迎えた『ミューズ』の安川有果監督は、あるお笑い芸人と妻の存在から物語のイメージを膨らませた。「(芸人は)すごく奥さんのことを自慢する方なんです。その自慢の仕方が「酒豪で面白い妻なんだ」というもの。奥さんも有名人なので、笑いが起きるんです。彼女がテレビに出る時には、その豪快なキャラクターを保とうとするんですが、合間に見せる繊細な表情を見ているうちに「この人を自由にしてあげたい」と思ったんです」と“語られるだけの存在ではない”人物を描くに至ったようだ。
橋本愛が主演する『愛はどこにも消えない』のメガホンをとった松本花奈監督は、山戸監督からオファーを受けた当時“無駄な時間”について思いを巡らせていた。「例えば、甲子園を目指していた男の子が(野球とは)全く違う職業について、異なる人生を歩み始める――甲子園に向けて頑張った時間は無駄だったんじゃないかと考えてしまっていたんです」と振り返り、本作のテーマと向き合った結果「誰かと結婚する時、その前に付き合っていた人との時間は、決して無駄な時間だったとは思ってはいけない。過去の自分の積み重ねによって、今の自分は形成されていると思う。自分が死ぬ時に「今までの自分、好きだったな」と思えるように作りました」と答えを導き出した。
締めの挨拶を任された山戸監督は、竹内監督の発言を引用して「「女性監督ならでは」という言葉は、おそらくここにいる全員が言われたことがあるはず。それに言葉で反論しようとは思いません。言葉を映画が追い越す瞬間があると思っているからです。映画的な批評よりも、批評的な映画の方がずっと速度が早いと思います。これは批評へのチャレンジでもあります」と高らかに宣言。「この場に強い意志を持って見に来てくださった皆さんと“第1歩”をともにさせていただいたという思いでいっぱいです。皆さんの話、めっちゃ面白かったです! 最後まで笑顔で聞いてくださったので、とても良い始まりでした」と観客に謝意を示し、2019年2月8日から封切られる劇場公開版では、作品の並びが変更されることを明かした。
なおQ&Aには、『君のシーツ』の井樫彩監督、『粘膜』の加藤綾佳監督、『reborn』の坂本ユカリ監督、『I wanna be your cat』の首藤凜監督、『珊瑚樹』の夏都愛未監督、『out of fashion』の東佳苗監督、『セフレとセックスレス』のふくだももこ監督、『回転てん子とどりーむ母ちゃん』の山中瑶子監督、『projection』の金子由里奈監督も登壇した。『21世紀の女の子』は、19年2月8日から全国順次公開。第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。