10/27(土)コンペティション『詩人』上映後、リウ・ハオ監督、ソン・ジアさん(女優)、チュー・ヤーウェンさん(俳優)、チョウ・キョンさん(プロデューサー)をお迎えし、Q&A が行われました。
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矢田部PD(司会):リウ・ハオ監督、素晴らしく美しい胸を打つこの作品をワールドプレミアで東京国際映画祭に出品してくださいまして、本当に心より感謝申し上げます。お会いできてうれしいです。みなさまから一言ずつご挨拶を頂戴できますでしょうか?
リウ・ハオ監督:今日は本当に私たちのこの映画を観に来てくださってありがとうございます。
ソン・ジアさん:みなさんこんにちは、ソン・ジアです。私はこの作品の中で妻のチェン・フイを演じています。今日はどうもありがとうございます。
チュー・ヤーウェンさん:みなさんこんにちは。僕はこの映画の中で毛糸のスパッツの毛糸を解くのが好きな詩人の役を演じましたチュー・ヤーウェンです。よろしくお願いします。
矢田部PD:チョウ・キョンさんは、いつも東京国際映画祭に素晴らしい中国映画を紹介してくださる、我々にとって非常に大切な仲間のお1人です。チョウさん、よろしくお願いします。
チョウ・キョンさん:みなさんこんにちは。私はこの作品のプロデューサーのチョウ・キョンです。今日はどうもありがとうございます。そして矢田部さんは毎回私たちの作品を東京国際映画祭に呼んでくださって、本当に感謝申し上げます。
矢田部PD:ありがとうございます。この作品は80年代から90年代頭にかけての物語だと思います。その時代を背景に映画を作ろうと思ったきっかけをお話しいただけますでしょうか?
リウ・ハオ監督:私は1969年に生まれまして、ちょうど80年代から90年代というのは私が幼い頃から若い頃を経験してきた時代です。この歴史を見てきた、検証してきた者と言えます。なので、この時代についてとても興味があります。
矢田部PD:その時代を生きてこられてご自分の自伝的な映画にも出来たと思うのですが、こういった夫婦の物語を作られた、そのバックグラウンドも教えてください。
リウ・ハオ監督:この夫婦の話というのは私の実体験ではあません。私は実は以前、かなり長い間マスコミで働いていたことがありまして、その経験がこの映画の中に活きています。そのマスコミにいた時代、私は中国の各地に色々と取材に行きまして、色んなことを見て来ました。そして中国の西北部、ちょうどこの映画の舞台になっていますけれども、そういう場所にも行って色んなことを見聞きして参りました。
矢田部PD:ありがとうございます。では、ソン・ジアさんにお伺いしたいのですけれども、どのような経緯でこの作品に参加されるようになったのでしょうか?
ソン・ジアさん:その前に、私は今ここでこの映画を観終わったばかりなので、私が映画を観た感想を申し上げてもよろしいでしょうか?
ちょうど去年の今頃この映画を撮影していたと思います。その後に様々な映画に出演しましたので色々なことを忘れていましたが、今日ここで初めて出来上がった作品を観て、特に後半になると感情が抑えきれないくらいに感動しました。何て美しい映画なのだろうと思いました。例えそれが残酷な美であったとしても、非常に美しい素敵な映画になったと思います。
矢田部PD:チュー・ヤーウェンさんは今この映画をご覧になってどのような感想をお持ちですか?
チュー・ヤーウェンさん:ずっとこの情感の中に溺れて浸りきっていたという感じです。これはですね、自分が演じていながら、本当にこのリー・ウーという役を演じたのだろうかというような不思議な感情を僕にもたらした映画でした。この時代というのは非常に特殊な時代だったわけです。こういう特殊な時代に於いて精神世界の崩壊というものをこの作品の中に感じました。そういう精神世界が崩壊して行く中で非常に孤独な環境下で、あんなにも愛し合っていた夫婦、そういうことが私の心を打ちました。本当に今回この映画に出て、リー・ウーとチェン・フイという夫婦役を演じることが出来て、彼らの人生を生きることが出来て、とても幸せだったと思います。ありがとうございます。
矢田部PD:みなさまからご質問をお受けしたいと思います。
Q:素晴らしい映画をどうもありがとうございました。新居はウイグル自治区でしょうか?監督にお伺いしたいのですが、日本にはすれ違い映画というのがございます。この映画では後半に夫婦がすれ違う場面が2回ありました。日本的な映画だと会わせる場面だと思うのですが、どうして監督は夫婦を会わせてくれなかったのですか?
リウ・ハオ監督:まず一つ目の、新居はウイグル自治区でしょうかという質問ですが、これは場所を借りたロケ地であったというだけです。特にどこの場所というわけではなくて、とにかく社会の底辺で一生懸命生きる庶民の話を作りたいと思いました。
それから、すれ違いということをおっしゃいましたが、映画の中ではすれ違わせてしまったのですが、今ここ東京で二人を会わせました。
Q:しつこいようですが、なぜですか?
リウ・ハオ監督:それは劇作上の必要だったので。このストーリーは会わせてしまったら別の物になってしまいますよね。
矢田部PD:続きましていかがでしょうか?
Q:ご夫婦を演じるにあたってお二人の間で申し合わせ事項ですとか何かおありでしたか?あと、こういったエンディングになるので演じる上で注意してほしいという演出的なご指示とかはあったでしょうか?
ソン・ジアさん:そうですね、チュー・ヤーウェンさんとは十数年来の友人で、とても革命的なドラマで共演させていただいてから十数年という長い年月が経ちました。二人ともこういう風に成長したわけですけれども、まず、この『詩人』は脚本がとても素晴らしい、大好きだと思いました。そして、その中で夫婦役を演じるわけですが、ドラマや映画の中で夫婦を演じるというのはとても難しいのですね。夫婦の雰囲気を出さなくてはいけない、今回は特に非常に濃密な情愛を通わせる夫婦の役なので、観客に説得力をもたらすような演技をしなくてはいけない。影も匂いも残しておきたいというような、そこまでの思いを夫に抱く妻の役ですから。そういう役の相手役として友人であるチュー・ヤーウェンさんが相手役だったのでとてもやりやすかったです。どうですか?私たち夫婦に見えましたか?
司会:ありがとうございます。ヤーウェンさんはいかがでしょう?
チュー・ヤーウェンさん:中国の役者さんの中で、私の妻以外で私のことを一番よく知っているのがソン・ジアさんです。妻は今客席に来ていますよ。
この映画は非常に誠実な映画であると僕は思っています。この時代に対して色んな深い思いがみんなそれぞれにあると思います。きちんとした記憶をみなさんお持ちになると思うので、この映画の中で嘘は絶対に演じられないわけなのです。必ずその時代の雰囲気、人々の情感を着実に非常にリアルに伝えて、そしてあの時代を完全に復元できるような感じにしなければいけないと思いました。
矢田部PD:ありがとうございます。
Q:妻役のソン・ジアさんが母のように、息子に対するように自分の夫に接していましたが、この二人の情感を演じるためにどのような工夫をされたでしょうか?
ソン・ジアさん:そうですね、女性というのは生まれながらにして母性を持っている、男というのは生まれながらにして息子のようなものであるというようなことを聞きます。このリー・ウーという詩人と、妻のチェン・フイを演じるにあたって私が理解したのは、おそらく色んな夫婦が、母と息子のような関係を多かれ少なかれ夫婦の間にみんな持っていると思うのです。女性というのは非常に息子を包み込むような包容力のある存在として、私はこのチェン・フイを理解しました。そして、二人の情感が非常にリアルであるということ、とてもこの夫婦が独特の表現方法でお互い夫婦の情感を表現していて、とても美しいなと私は思いました。
矢田部PD:ありがとうございます。監督、最後に一言お願いします。
リウ・ハオ監督:もう一度みなさんに感謝を申し上げます。ありがとうございました。