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WOWOWのドキュメンタリー「野村家三代 パリに舞う 万作・萬斎・裕基、未来へ」が10月31日、第31回東京国際映画祭の特別招待作品としてTOHOシネマズ六本木ヒルズで上映された。
タイトル通り、野村万作、野村萬斎、野村裕基の親子三世代が今年9月にパリのピエール・カルダン劇場で狂言の究極の舞いといわれる「三番叟(さんばそう)」を披露する舞台に密着。上映後にトークショーに臨んだ萬斎は、「無形文化なので映像化されていい形で残って大変良かったという半面、いろんなものが残ってしまうので諸刃の剣でもありますね」と苦笑いだ。
人間国宝で現在87歳の万作に関しては、「長生きしてくれるのはありがたいが、それだけハードルが上がるから困る。私は解脱と言っているが、もう自我がないというか己のない世界観を見せられると何をやってもかなわないと思う」と畏敬の念。対して裕基については、「まだ駆け出し。これからもっと基礎を体に叩き込んで、個性が出るようになって芸を確立してほしい」と師匠として厳しいエールを送った。
2020年の東京五輪・パラリンピックでは、開閉会式の演出を総合統括するチーフ・エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターに就任。「伝承している芸なので、料理にたとえればレシピは一緒。踊る体の躍動感は見せなければいけないが、失ってはいけないのは精神性」とプランの一端を明かし、自身が踊ることにも含みをもたせた。
そして、「狂言は国、時代を越えてどこにでもいるような人物にスポットを当て、褒められないことを笑い飛ばせるのが良さ」と説明。“入門編”として「棒縛り」や「蝸牛(かぎゅう)」などの演目を挙げ、「いきなり能楽堂に入るのはためらわれるだろうから、公共の劇場でやる時は解説も付いていますし分かりやすいものをやることが多い。今どきはスマホで調べれば出てくるので、少しでも知識を持ってから行くことをお薦めします」と指南していた。
「野村家三代 パリに舞う 万作・萬斎・裕基、未来へ」は11月11日午後6時半からWOWOWで放送。第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催される。