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第31回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品された『シレンズ・コール』が10月30日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、来日したトルコのラミン・マタン監督、俳優のデニズ・ジェリオウル、女優のエズギ・チェリキ、プロデューサーのエミネ・ユルドゥルムが会見した。
建設会社勤務の男は都会の生活に疲れ果て、地方でオーガニックな生活を楽しむ女性シレンに会うべく脱出を図るが障害が相次ぐ。消費社会の矛盾や脱出幻想をシニカルに描いたブラックコメディ。
主人公は妻のコネで大手建設会社に勤務、何もかも捨てて新た土地を目指すが、大渋滞で空港にたどり着けないという設定だ。再開発ラッシュが進む首都イスタンブールの街並みが映し出される。マタン監督は「人口は公式では1700~800万人程度。建設バブルが起きましたが、しかしそれほど必要がなかったので、マンションが150万戸ぐらい売れ残っているそうです。建設計画もインフラや住民を考慮しているわけではなく、経済を回すための建設ラッシュなのです」とその現状を憂い、「この街から逃れたいというテーマはイスタンブールの人の共通のテーマだと思った。それを探求したかった」と話す。
リアルな映像を追求したかったといい「予算が限られていたので、生々しさを作るというよりは、ゲリラ的に撮りました。バスの中を撮る時も、道路を閉鎖することもなく、小型カメラでどこでも撮影したのです」と振り返る。予算面で苦労をしたと明かすプロデューサーのユルドゥルムは「2016年トルコでクーデターがあり、一度プリプロダクションの作業を止めなければなりませんでした。翌年撮影を再開したものの予算も限られていました。キャストもクルーもすばらしかったのですが、駆けずり回る主人公をリアルに撮影にするのが難しかった」と付け加えた。
主演のジェリオウルは「都会に住んでいる精神的に自分と遠くないキャラクターです。だめ男ぶりを提示しつつも、観客が共感できるようにすることが難しかった」、主人公をヒッピー的な生活に誘うシレンをチェリキは「彼女は実際に都会を離れるという行動を起こしたけれど、行った先の生活を作るのは自分自身。田舎に行ってもメンタリティは変わっていない。そういう意味で一貫性のあるキャラクターです」とそれぞれ自身の役柄を説明した。
第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。