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第31回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品された『半世界』が10月30日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、主演の稲垣吾郎と阪本順治監督が会見した。
稲垣主演、阪本監督のオリジナル作。地方の小さな町で育った幼馴染の3人が、それぞれの人生を送りながら40歳を目前に再会する。家族や友人との絆、希望を描くヒューマンドラマ。長谷川博己、池脇千鶴、渋川清彦ら実力派が共演する。
これまでクールで都会的な役が多かった稲垣だが、今作では地方都市で家業を継いだ炭焼き職人で、ひとり息子の気持ちを汲むことの苦手な父親という役を好演。「はまっていると言われると複雑ですが……。自分がどういう人間かはわからないですし、ぴったりな役は分からなくてもいいと思うんです。でないといろんな役を演じられません。大きかったことは、ここ数年で自分の環境の変化があって、仕事の仕方も変わって、役者として初めての1作で、自分でも見たことのない自分がスクリーンに現れたこと。この作品にめぐりあえたことが幸せ」と感慨深げに語る。「チェーンソーをもって木を伐採したり、頭にタオルを巻いてみかんを食べたり、日本の原風景のなかで生きる。そういう役者の稲垣吾郎は見たことない。自画自賛にもなりますが、自分じゃない自分がいたのは、役になりきれていたのかな」と振り返った。
男3人の友情と絆で主人公が支えられる姿を描く作品だ。自身との共通点を問われると「僕は個人的には古くからの友達はいないタイプ。皆さん聞き飽きたと思いますが、年上のひろくんというおじさんの友達はいますが(笑)。ずっと仕事は男のグループでやってきているので、また形が変わって今は「新しい地図」として香取君や草なぎ君と、多くのファンの皆さんとともにその地図を広げていくことに無我夢中。友情と仕事の仲間は違うけど、そういった絆は僕らにもあるしすごく分かる。二人にも早く見てほしい」と語った。
題名の『半世界』について問われた阪本監督は、日中戦争従軍カメラマン、小石清氏が中国で撮影した写真集のタイトルからとったものだと説明「写されていたのは、日本軍の勇ましい姿ではなく、中国のおじいちゃんやおばあちゃん、子供、象や鳥など、路地の様子を映していた。今、グローバリズムや都会が世界を語りますが、名もなき人の営みも世界なんだ、そういう思いに近づこうと思い、この映画を企画しました」と話す。
また、登場人物3人の職業が、元自衛隊員と自営業に設定した理由を「僕自身が商売人の子供で、去年90年続いた店を継がずに畳んだんです。自分と親父の関係などをヒントにしている。前作『エルネスト』はキューバで9割、その前の『人類資金』もあり、5~6年海外で撮影が多かったので、地元に帰るような気持ちで、小さな都市の小さな話、間口は狭いけど、広く深い話を描き、元自衛官を通して小さな町から世界を見ることをやってみたかった」と明かした。
第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。