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2018.10.28 [イベントレポート]
岸井ゆきの&今泉力哉監督“迷子”になることが重要だった『愛がなんだ』を語る
映画コムニュース
©2018 TIFF
映画.com

直木賞作家・角田光代氏の恋愛小説を映画化した『愛がなんだ』が10月28日、第31回東京国際映画祭のコンペティション部門で公式上映され、主演の岸井ゆきのとメガホンをとった今泉力哉監督が会見に出席した。

28歳のOL・山田テルコ(岸井)は、5カ月前に一目惚れしたマモル(成田凌)のためならば、仕事も友だちもそっちのけに。失業しかけても、親友に冷たい目で見られても、マモルのそばにいられるだけで幸福を噛みしめる。しかし、彼にとってテルコは、ただの都合の良い女でしかなかった。

“好きになってくれない男”を一途に追いかけてしまうテルコを熱演した岸井。「(オファーを受け)原作を読んだときに「この役ができる!」と嬉しかった」と笑顔をはじけさせ、役との共通点を「好きなものや人に一直線になるところは似ている」と明かす。そんな姿に、今泉監督は「いい意味で器用な方ではないので、そこがテルコを演じてもらううえでよかった」と頼もしげな視線を投げかけた。

これまで片思いをテーマに多くの作品を紡いできた今泉監督は、「結婚していても付き合っていても、カップルが「50:50」の同じ気持ちで思い合っていることはない。思いの差は必ずあって、そこに興味があるんです。片思いは、そのひとつの形」と持論を述べる。今作で注力したポイントのひとつは“視線を観客に委ねること”だと話し、長回しを多用した意図を「カット割りを多くすると(製作者が意図した)カットを見ることになりますが、2ショットの長回しを多用することで、お客さんが(どこを見るか)選択できるようにした。それが豊かさに繋がる」と説明した。

“役者が生き生きする瞬間”も重要だったようで、キャスト陣の切実な心情がにじみ出るような芝居が全編を支える。今泉監督は、自身のアイデアを過信しすぎないことを心がけていたといい、「役者さんと相談し、演じてもらい、自分が思うよりも面白いものが出る可能性を閉ざさないことは、現場でよくやる演出方法です」と述べた。これに岸井も「今泉さんとシーンの相談をすると「私はこういう風に思う。どう?」「僕はこう思うけど、やってみて」。答えを監督に求めにいくのではなく、2人で一緒に悩んでつくっていました」と現場を振り返り、「きっと、そういう迷いや戸惑いは、テルコの迷いと重なる。2人で一緒に迷子になりながら、現場で土台を作っていった気がします」と目を細めていた。

一方で今泉監督は「役者さんが、その役に思い切り“入っている”瞬間では、先輩から聞いた「役者が気持ちよくなったら気をつけろ」という言葉がずっと頭にあって」と切り出し、「作り手も役者も、不安でいるほうが面白いものができる。気持ちよくなるとエゴが出てきて、お客さんが引いてしまう。役者さんが役になるためには、その役を思い切りつかんでいないほうが、いいと思っています」とも語っていた。第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催される。なお『愛がなんだ』は、2019年春に劇場公開予定。
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