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第31回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されたイギリス映画『ホワイト・クロウ(原題)』が10月27日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、来日したレイフ・ファインズ監督、プロデューサーのガブリエル・タナが会見した。
史上最高のバレエダンサーのひとりと呼ばれる、ルドルフ・ヌレエフの半生をファインズが映画化。型破りな技術と性格を持つダンサーのキャリア開花と、ソ連からの亡命劇をスリリングに描く。
3度目の監督作を引っさげ、日本の報道陣の前に立ったファインズは「自分たちの人生を投入して作った映画です」と、挨拶と共に作品への思い入れを語る。「一番強調したかったのは、ヌルエフのキャラクターです。若いアーティストが自己実現したいという意志、スピリットに感激したのです。この映画は3つの場面で構成されていて、それが合わさったものが彼のポートレートとなり、そして、彼が闘ってきたものが最後の一言に集約されています」とテーマを説明した。
演舞シーンもあり、複雑な内面を持つヌレエフのキャラクターを演じる人物を探すキャスティングに苦労したそうで「脚本はドラマシーンがたくさんあるので、演技力のある人が良いと思われましたが、私は監督として、演技のできる俳優を選んでバレエを習わせることにためらいがあったのです。バレエは、幼いころから染み付いたものが現れるダンスです。(俳優が主演した場合)ボディダブルが必要となるので、ダンサーで演技ができる人を探そうと思ったのです」と明かす。
ロシアで行われた大規模なオーディションで、ヌレエフ役を射止めたのは、現役ダンサーのオレグ・イベンコ。「彼はヌレエフに身体的に似ており、スクリーンでの演技を理解でき、インテリジェンスがあり、カメラに愛されている。映像の中の彼を、観客がいつまでも見ていたい思うスターの資質があるとわかりました」と、自身の長年のキャリアからの視点で選んだイベンコの才能を挙げた。
現場に立ち会ったプロデューサーのタナは「彼らのやり取りを見られることがありがたかった。レイフはすばらしい教師で、演技ができるかわからないオレグの才能を引き出していったのです。現在、オレグは俳優を目指したいと、熱心に英語を習っているそうです。レイフはこのような変容という、大きなギフトをオレグに与えたのです」と称える。ファインズも俳優として出演していることについては「映画の商業的な価値として、彼が演じたほうが良いと思ったのです。もちろん頼むのはつらかったです。次回作は監督に専念してほしいと思っています」と語った。
第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。