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第31回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されたイタリア映画『堕ちた希望』が10月26日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、来日したエドアルド・デ・アンジェリス監督、女優のピーナ・トゥルコが会見した。
ナポリ郊外、イタリア屈指の無法地帯と呼ばれる荒れた海辺を舞台とした、サバイバルドラマ。売春、人身売買組織の手先として働くヒロインが、自らの妊娠を機に人生を変える賭けに出る物語。
組織を牛耳るのも、売買される娼婦や子供を管理するのもすべて女性という異色の設定だ。アンジェリス監督は「男たちが男の役割を見失い、迷った世界像を描きたかった。この映画では、女が男としての役割を担い、最後に、唯一男として認められる男をひっぱってくるのです。自分が3人の女性に育てられたので、女性を描いたということもあります。女性は弱いというクリシェを壊したかったのです」とその意図を語る。
川沿いに娼館や簡素な住居が立ち並ぶ物語の舞台背景に関しては「飢えや戦争からの難民、仕事を失った人などが辿り着く場所があります。そこでは、この映画のように売春で生きたり、そこで生まれた子供を売るような仕事をしている人もいます。そして、その運命の先は誰も知りません」と、現実にもこの物語に近い環境があることを示唆した。
難役を演じたトゥルコは、「肉体を使う仕事でした。頭を使って仕事をするときよりもストレスは少なかったけれど、鍛えることが必要でした。肉体を使って話しかける、身体性がマリアには大事だと思ったのです」と役作りを振り返る。
主人公が劣悪な環境の中で子供を産むという選択について「彼女がはじめて大きな決断をして、人間的な存在になったという経緯が大事。子供が生まれることより、子供を産むことによって、彼女が自分自身を見つめたことに興味がありました。世界に対して、自分がどういう人間であるかということを示せたと思います」と思いを述べた。
第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。