©2018 TIFF
第31回東京国際映画祭「Japan Now」部門の特集企画「映画俳優 役所広司」で、『キツツキと雨』が10月26日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、役所広司、古舘寛治、メガホンをとった沖田修一監督がティーチインに出席した。
役所が小栗旬と初共演を果たした本作は、人里離れた小さな村で暮らす木こり・克彦(役所)と、デビュー作の撮影に悪戦苦闘する新人監督・幸一(小栗)の交流を、コミカルな要素を盛り込みながら温かく描いた作品。クランクインを果たしたのは、東日本大震災直後のことだったそうで、役所は「僕たちは映画を撮っていていいんだろうかと話し合いになった」と述懐。だが、本作を通じて「笑顔を届けられる」という結論に達し、一致団結して撮影に臨んでいたようだ。
助監督の鳥居役で出演した古館が「沖田監督の映画には、この作品まで全部出ているんです。でも、この作品以降呼ばれなくなった。何か粗相をしたのかな(笑)」と冗談交じりに話すと、役所は「(克彦が)木を伐採するシーンで、(倒れる先にいた)古館君が逃げるんです。監督は危ない感じを求めていたんですけど、1度逃げ過ぎたんですよね」とリテイクしていたことを暴露。1本の伐採ごとに数十万円もかかってしまうシーンだったようだが、「もう1本切ったのに、あまり近くにいけなかった」(古館)という言葉を受けて「それで呼ばれなくなったんじゃない?」といじり倒していた。
第24回東京国際映画祭では、審査員特別賞を獲得した『キツツキと雨』。役所の記憶に鮮明に残っていたのは、受賞が決まった後に開催した打ち上げでの出来事だ。「(共同脚本の)守屋(文雄)君が、監督と狭い部屋で本を書いたという思い出を熱弁したんですよ。監督、感極まっちゃって。手にしていた紙ナプキンが(涙を拭くことで)ものすごくちっちゃくなるまで泣いていましたね」としみじみ。一方、撮影の日々で印象的だったのは、ユンボの操縦。「(役所は)ずっと1人で練習されていました。林業の方々が「あんなに短期間でユンボが扱えるようになる人は初めて」と仰ってましたね」(沖田監督)と明かされると、役所は「ユンボは面白いんですよ。ガンダムに乗っているような感じです(笑)」と振り返っていた。
沖田作品の大ファンだという観客から「演技を見ているというよりは“お喋り”、映画を見ているというよりは1つの情景をのぞかせてもらっている」という共通イメージがあるという意見が飛び出すと、役所は「のぞき見をしているという感覚を抱かせているということは、映画が成功しているということですよね。見せているというよりは、こっちが“見られている”。監督はあまりカットを割らないスタイルですから、狙い通りにいっている」と説明。さらに「テストの段階で撮影手法を説明してくれるんですが、俳優さんの芝居を1度見て、その場でプランを考えてくれるんですよね。「最初のお客さんは監督だった」みたいな感じになるんじゃないでしょうか」と語っていた。
第31回東京国際映画祭は、11月3日まで六本木ヒルズ、東京ミッドタウン日比谷などで開催。