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第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを獲得した是枝裕和監督作『万引き家族』が10月31日、第31回東京国際映画祭のJapan Now部門で上映され、出演のリリー・フランキーがQ&Aに出席した。
万引きで生計を立てながら東京の片隅に暮らす“家族”の切実な絆を描いた今作。息子とともに万引きを繰り返す父親に扮したリリーは、「去年の夏、まだ台本がない時に海水浴のシーンだけ撮った。そして実際の撮影は去年の12月から今年の1月いっぱい。今年撮った映画なんですよ」と話し、「ほとんどの映画は、撮影が終わった1年以上後に公開になるんですが……、よく考えたら、今年は『万引き家族』のことしかやっていない」と笑った。
さらに、共演した故樹木希林さんから「声に品がありすぎるのが欠点」と指摘されたことに触れ、「自分で言うのもなんですが、声がいいもんですから。下品なおじさん役ですから、声を変えたいと思っていたら、樹木さんに言われた」と振り返る。是枝監督からは「最初から最後まで、見るべきところのないお父さんでいてくれ」とリクエストがあったそうだが、「今回は、役者が演じるときに「欲が出る」というよくない気持ちを、やっていて感じる瞬間があった。(役には)見事に良いところがひとつもないんです。拘置所のシーンとか「もうちょっと良いこと言いたい! (母親役の安藤)サクラだけ良いこと言ってずるい!」って(笑)」と吹き出しながら語っていた。
今作が完成する直前の秘話にも言及。もともとは「声に出して呼んで」というタイトルであり、「直前までそのタイトルだった。スタッフTシャツも台本も、そのタイトルなんですよ。だから『万引き家族』という台本は、この世に存在していない」と述べ、「急にすげえタイトルになった。キャッチーに覚えてもらったのかも知れないけど、まさか日本でヒットするとは。この夏、食堂のおばちゃんとか道のおじさんに「お、万引きの人!」と言われた。世の中の評判が悪くなった」とジョークを飛ばす。そして「「声に出して呼んで」というタイトルだと思うと、この映画はもっと見やすい」といい、「桧吏の「父ちゃん」、希林さんの「ありがとう」など(口の動きだけのセリフ)は全部、ちゃんと見ないとわからない。海外の映画祭で見ると、字幕がついているからすごく親切。海外で見たほうがグッとくる」と説明していた。
最後に、リリーは「今年撮っていた映画ですが、僕にとっては、つい最近まで撮影していたような」と切り出す。「でも、もう希林さんが亡くなっていたり、希林さんが亡くなる1カ月ほど前に自分の父親や師匠が亡くなったり。おめでとうとお悔やみを交互に聞いているなかで、しかしこの映画が劇場でかかっているうちは、まだ何も終わっていないような気持ちがある」と胸中を明かし、「世界中の人に見ていただけて嬉しい。この“家族”みんなにとって、特別な映画です」と真心を込めた。
第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。