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俳優の役所広司と黒沢清監督が10月27日、第31回東京国際映画祭の「Japan Now」部門の特集企画「映画俳優 役所広司」で、TOHOシネマズ六本木ヒルズでの1997年『CURE キュア』上映後にティーチインを行った。
奇妙な連続殺人事件を追う刑事と記憶喪失の青年の対決を軸にしたサイコサスペンス。黒沢監督は「当時はやくざもののVシネマをたくさん撮っていた時期で、それよりメジャーな企画としてオリジナルで脚本を書いた。理想としては、役所さんが出てくれたら成立する」と、ダメ元でオファーしたという。
前年の『Shall we ダンス?』や同年の『うなぎ』『失楽園』などでトップ俳優だった役所も、「すごい監督がいると噂では聞いていて、声がかかると思っていなかった」と振り返る。その時点では「伝道師」というタイトルだった脚本にほれ込み、「ぜひ参加させてください」と快諾した。
「売れっ子なのに、出てきた瞬間にこの人が何者なのか分からない、未知の領域を含んだスター。そんな人は当時も今もほとんどいない。その感じが役にピッタリだった」と説明する黒沢監督。対する役所は、「監督の台本も未知。ここは(役が)どういう気持ちになっているんでしょうと聞いても、「さあ、どうなんでしょう」という感じでした」と苦笑いで応戦した。
撮影はほとんどが1シーン1カットで、黒沢監督は「1カットの中で正気から狂気に変わっていく、普通からちょっとおかしな状態になるのを流れの中でとらえたいと、そこは意識した」と説明。「言うはやすしで、演じるのは大変ですよね」という気遣いに、役所は「監督はテストも重ねないので、長いシーンをやる時はしびれますよね。でも、1カットの力はすごい。映画として伝わる」と真摯に答えた。
タイトルは、当時のオウム真理教事件などで宗教的なものと誤解を招くことを避け、『CURE』になった。役所は同作で、第10回東京国際映画祭で最優秀男優賞を受賞。以降、『カリスマ』『回路』『ドッペルゲンガー』など黒沢作品の常連となった。
観客からの指摘で、役所が黒沢監督作品以外、ホラー映画に出演していないことも判明。黒沢監督は、「役所さんのホラーを僕が独占しているわけですね。それはうれしい」とほおを緩めていた。
第31回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。