日本を含むアジアの気鋭監督3名が、ひとつのテーマをもとにオムニバス映画を共同製作するプロジェクト「アジア三面鏡」。本年は三面鏡シリーズ第2弾となる『アジア三面鏡2018:Journey』を、第31回東京国際映画祭に於きましてワールドプレミア上映し、またこれに先駆け、第1弾『アジア三面鏡2016:リフレクションズ』の劇場公開が決定いたしました。
そしてこの度、日本外国特派員協会にて毎年開催しております東京国際映画祭の記者会見に、第1弾より行定勲監督、第2弾より松永大司監督を迎え、それぞれの作品に関する想いを語っていただきました。久松猛朗フェスティバル・ディレクターより、本企画の趣旨について説明。国際交流基金理事長の安藤裕康氏と「Japan Now」部門プログラミング・アドバイザー 安藤紘平氏も登場し2人の監督と作品に対する想いを語りました。
第31回東京国際映画祭では開催期間中、200以上もの映画が上映予定、世界中から訪れた著名なゲストが多数登場し、Q&Aやシンポジウムが開催されるなど、東京国際映画祭ならではのイベントが目白押しです。
日時:10/3(水)17:00~
会場:公益社団法人 日本外国特派員協会(FCCJ)
登壇者:
行定勲監督(『アジア三面鏡2016:リフレクションズ』『鳩 Pigeon』監督)
松永大司監督(『アジア三面鏡2018:Journey』『碧朱(へきしゅ)』監督)
久松猛朗(東京国際映画祭 フェスティバルディレクター)
安藤裕康(国際交流基金 理事長)
安藤紘平(「JAPAN NOW」部門プログラミングアドバイザー)
【フェスティバル・ディレクター 久松猛朗コメント】
去年に始めた企画に加えて「Expansive」を強化する意味で、今年オープンした東京ミッドタウン日比谷の日比谷ステップ広場を新たな会場として加えて、通期で野外上映やイベントを実施します。更に、「TIFFプラス」という名称で、アニメ、音楽、ファッションなど、映画以外の6つの業種とコラボしたイベントを実施して、映画祭に新たな魅力を加えます。このイベントを通して、これまで映画祭に足を運んだことがなかった人達にも来場して貰い、映画祭へ興味を持って頂ければと思います。
また、毎年好評を頂いている「Japan Now」部門では、今や日本を代表する俳優と言っても過言ではない「役所広司さん」を特集し、アニメ部門では世界的に評価の高い「湯浅政明監督」を特集します。また「Enlightening」では、「日本映画スプラッシュ」に「作品賞」に次ぐ「監督賞」を加えることにしました。
そして、今年初めてAsian Film Awards Academyの協力で、香港の映像関係の学生十数名を日本に招待して、TIFFを経験して貰うと共に、日本の映画関係者との交流を図って貰います。
【安藤裕康 国際交流基金 理事長 コメント】
私ども国際交流基金では、近年力を注いでいることが2つあります。もちろん世界中の国々との文化交流を進めていっているのですが、特にアジアとの関係を重視しています。アジア地域は日本に近いということもあり、日本にとって重要な地域です。現在世界人口の53%がアジアで絞めています。この地域の経済は急成長しており、世界の経済の成長を促進させている点から、アジアは日本にとってさらに重要になると思います。
日本文化を世界に発信するワンウェイではなく、世界から日本に世界の文化を伝えるという共同で、双方方向でのやり取りに力を入れています。そういう流れの中で、東京国際映画祭(以降TIFF)と協力して近年プロジェクトを進めてきております。
2年前3話からなるオムニバス映画『アジア三面鏡2016:リフレクションズ』を作らさせていただきました。8月に亡くなられた津川雅彦さんの最後の主演作『鳩 Pigeon』を行定監督が制作、10月12日より劇場公開されます。
そして今年『アジア三面鏡2018:Journey』が、10月25日から開催されます第31回東京国際映画祭でワールド・プレミア上映されることが決定いたしました。これからも、私共国際交流基金は東京国際映画祭と協力のもと、映画交流を進めていきたいと思っております。
【安藤紘平 プログラミング・アドバイザー コメント】
今の世界の流れは「アメリカファースト」など、考え方が一極集中する傾向がありますが、今年の「JAPAN NOW」は、逆に、“多様性”とか“あいまいさ”を意味する『アンビギュイティ』をテーマにしました。そこで、今回は、多様なキャラクターを自在に演ずる日本の今を代表する俳優・役所広司さんを特集します。20年前にカンヌのパルムドールを受賞した『うなぎ』をはじめ、『キツツキと雨』、『CURE』、『Shall we ダンス?』、そして『孤狼の血』と、まさに、アンビギュイティな作品を揃えております。
その他9作品を選んでおります。今日いらっしゃる行定監督の『リヴァーズ・エッジ』をはじめ、カンヌを制覇した『万引き家族』、『モリのいる場所』、『パンク侍、斬られて候』、『菊とギロチン』、『ペンギン・ハイウェイ』、『カメラを止めるな』、『きみの鳥はうたえる』、『サイモン&タダタカシ』といった新しい才能たちの見ごたえのある素晴らしい作品がご覧いただけます。
【行定勲監督 コメント】
私自身アジア映画に影響を受けており。恩返しのつもりで取り組んだ舞台がマレーシアです。ヤスミン・アハマドという女性監督がいらっしゃいまして、2009年にお亡くなりなっていますが、彼女から知ったマレーシアの良さ、情緒、マレーシアで映画を制作してきた多くの方々が築いてきたその国独特の情緒と私の作品が融合されるのが楽しみでした。アジアの映画人と繋がり、お互いにどう影響されるのかにすごく期待していました。ただ1点、マレーシアは暑かったです。暑い昼間に撮影をしているのは私と撮影カメラマンだけでした。マレーシアのスタッフは心配してくれて、スタッフの方が日傘をさしてくれる人を手配してくれました。言うまでもなく夕方からしか仕事ははかどらなかったですね。その国の良さに触れ、イライラせず一緒にやれることに慣れてくると、撮影が楽しくてたまらなかったです。よき思い出です。
故人・津川雅彦さんについて
津川雅彦さんの訃報は非常にショックでした。暑いペナン島での撮影を思い出さずにはいられません。津川さんは海外の撮影が大嫌いということを知っていたため、多分ダメだろうなと思っていました。主人公の孤独な老人のイメージが、私自身の祖父のイメージが重なり、そのイメージを生き写しのように撮影したくオファーをしたところ、撮影に参加すると言っていただきました。津川さんは最初、自身が演じる役を「死と生の狭間に存在する役なんだね」とおっしゃいました。撮影に入る際、津川さんは7、8kg減量され、役を体現する姿で現地に入ってこられました。鬼気迫る緊張感で、マレーシアの女優が恐怖を抱くぐらいでした。私が思い描いていた津川さんは饒舌にしゃべる役を演じるイメージでした。マレーシアでの撮影では、ただそこに存在することを重視しているなと感じました。
私の記憶に深く刻まれているのが、海に近い場所でラストシーンを撮影した際。「死と生の狭間で人間は何もできないんだな」とおっしゃって、その後マレーシアの海を眺めている姿を、固唾を飲むように津川さんの姿をみて、撮影したのを忘れられません。この作品で、津川さんはマレーシアのスタッフ、キャストにとても愛されていました。僕も彼らも津川さんと一緒に仕事ができたことは誇りになったと思います。
【松永大司監督 コメント】
ミャンマーで撮影する前に、長編2作目として、ハワイで映画を撮影させてもらった経験が大きくて、今後の映画作りに於いて、どういう風な道を模索していくか、海外のクルーと一緒に作っていくことは、自分自身の作家性を広げていく一つの可能性だと思いました。
撮影クルーは中国、インドネシア、ミャンマー、イギリスと様々な国のメンバーでした。
映画を創るにあたって勉強になりましたし、日本の考え方が違うことが多かったため、言葉が通じないことが多かったんですね。もっと自分がそういった環境で映画作りを勉強して成長していきたいと思いました。
3作品にニコラス・サプットゥラが出演している件
まず3人の監督でスカイプ、直接会ってミーティングをし、3作品の楔となる共通テーマを設け、視覚的なものにするかなど話し合い、作りたい作品の骨格を出来ていく中でエドウィン監督の作品にニコラスが出ることをしりました。エドウィン監督から、ニコラスの役のアイデアを聞いた時に、私の作品でも出演できないかということから、ニコラスを3作品に出演してもらおうということになりました。
『アジア三面鏡2018:Journey』
⇒公式サイト